updated(first) | 06/01/2003 | last updated |
読書メモ 2003年5月 |
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このHPを始めた頃とは別人のように忙しくなってきました。当面このペースが続くでしょうし、今までとはちょっと違った感じになっていくのはポジティブな意味で捉えようと思います。 で、わりと好きな本ばかり読んでます。仕事でPC関係や横文字の本を読む機会が増えているので、余計「ちゃんとした日本語」が読みたくてしょうがないんですね。随分と保守的なラインナップですがこのあたりの本を読んでいると、不思議に気分がいい自分がいたり。 須賀敦子さんは行きつけの図書館で借りられる本は全部読んでしまったのでこれからどうするかって感じです。山本文緒さんや乃南アサさんをもう少し読んでみようかなぁ。サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」は原書もそんなに分厚くないので読めたら読んでみたいんですけどね。まぁこの本を村上春樹さんがほれ込んだ理由はわからないでもない。だって彼の初期の作品にタッチ、作風がそっくりだから。 |
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★感想 |
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須賀敦子さんのエッセイ。いつもながらの「須賀節」が楽しめるわけだが。 ユルスナールの「ハドリアヌスの回想」の取材からローマ、ヴェネツィアへと思いをはせる。東京でフランス語教師をしながらもついには居場所を見つけられなかったジャック・ヴァランという青年。フィレンツェの図書館の歴史を調べるついでに発見したルネサンス期の書籍商と「読書家」の存在。ナポリの表通りスパッカ・ナポリをめぐる追想。などなど。 個人的に面白いな、と思ったのは。須賀さんは若い頃は文学に興味が集中していて、イタリアに住んでいながらもローマの街道や歴史遺産そのものにはそんなに関心がなかった。けれども一度それに目を留めるとやはり好奇心はおさえきれないようでマニアックなまでに調べまくる。塩野七生さんとは政治姿勢などが180度違うけれど、この箇所だけは妙な共通項を感じてしまった。 |
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★感想 |
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就職関係ではいろんな本を読んだんですが、これは値段も手ごろだったので買いました。 基本的なことばかりですが、こういうことの積み重ねで仕事していくんだから、と時々こういう本は読みます。 |
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★感想 |
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乃南アサさんのエッセイ。初出は女性誌だということ。 この人の文章って一種の「厳しさ」を感じて好きなんだけど、ここではエッセイということでその飾らない一端が見える。それによると料理はあまり得意ではないようで、自宅で執筆するので気分転換はもっぱら洗濯や掃除。Eメールは苦手で、人間観察は好きだが、自分のことになると他人からは「天然」と思われるようなことを平気でする。シワ取りや香水に当たり前に関心をもちつつも、それと同じテンションで最近の若者に「当たり前の常識」を説教する。 まぁ面白いですね。この著者の小説よりは深刻にならないし、いいです。 |
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★感想 |
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三国志の一方の雄、曹操を描いた作品。陳舜臣さんは以前にも「秘本三国志」で曹操を「三国志演義」で定着してしまった「乱世の姦雄」としてではなく、現実的な政治家、軍の司令官として描いていたが、この本では彼を主役に据えてオリジナリティあふれた世界を展開している。 曹操を中心にということで何人かオリジナル・キャラクターを作り出している。曹操に恋し、彼に遠慮会釈ない意見をぶつける従妹の紅珠(こうしゅ)。仏僧の立場から彼に情報を与える朱諸。また彼の一門の夏侯淳や曹仁にも「長い付き合い」としてスポットが当てられている。逆に普通三国志では脚光を浴びる許ちょなどの猛将の出番は少ない。戦争にしてもそれを行う前の根回し、外交戦略をじっくり描いていて戦争そのものの描写はほとんどカットされている。著者の関心がどのあたりにあるかがなんとなく伝わるだろうか。 尚、タイトルにあるとおり、当初は魏の曹操、曹丕、曹叡と続く一族を描くつもりだったようだが、連載の途中で扱うのが曹操のみと変わったそうだ。また序盤に比べると後半以降はやや急いだ感があるのがおしい。 |
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★感想 |
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この本売れてるらしいですね。野崎孝さんの旧訳(「ライ麦畑でつかまえて」、白水社)も引き続き発売されているし、原書も平積みされている書店もありました。僕はこれで初めて読んだので直接の比較はできませんが。 一人称で語られる青春小説って主人公の「勝手な内面」をどう感じるかで感想は変わってきそうですね。 ちょっと今の僕にはこの主人公は共感できないかなぁ。 「それじゃ、うまくいくものもいかないよ」と感じてしまいますね。 また時間を置いて読んでみたいとは思いましたが。 ※村上春樹と柴田元幸が翻訳について語り合った「翻訳夜話」を以前このコーナーでとりあげました。 |
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★感想 |
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須賀敦子さんのエッセイ。この本では彼女が女学生時代に読んだ思い出の本の話が次々に出てくる。父親が好きだったという森鴎外や、自宅の書庫にあった数々の文学作品。戦中にあって当時の子供には貴重だった「戦意高揚ものではない」「あちらの世界」の話。近所に住んでいた偏屈な老人が実は作家であったことをあとから知り、その作家の随筆から当時の自分の家のことを懐かしく思う、などなど。 |
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★感想 |
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「空騒ぎ/じゃじゃ馬ならし」に続いてのシェイクスピアです。シェイクピアの作品ではイギリスの王朝での出来事に取材したもの(「ヘンリー5世」など)以外は「史劇」とは言わないんですね。知らなかった。 この作品はシェイクピア作品としては珍しく、駄洒落、滑稽の要素がほとんど排除されています。なんでも「プルタルコス英雄伝」の「カエサル」「アントニウス」「プルータス」の章から忠実に戯曲化してるんだそうでそのせいでしょうか。「プルタルコス英雄伝」は筑摩書房から抄訳が出てますね。僕は「カエサル」「アントニウス」の章は読んだことがあるんですが。 ローマの絶対権力者であるシーザー(カエサル)に愛されながらも、自らの理想のためにシーザー暗殺の首謀者となるプルータス。彼の理想主義が現実の前に敗れ去っていく物語、としても読める。プルータスとキャシアスの互いの性格の違いを理解しながらの友情や、アントニウスが絶体絶命の状況からローマ市民の支持を勝ち取り、プルータスらに勝利するにいたる名演説など、見所もたっぷり。 シェイクスピアらしい作品とはいえないだろうけれど、単純に面白かったです。 |
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