ホームへ戻りますシネマトップへ updated(first) 02/06/2003 last updated


ギャング・オブ・ニューヨーク (2002/アメリカ)
監督  : マーティン・スコセッシ
出演  : レオナルド・ディカプリオ、キャメロン・ディアス、ダニエル・デイ・ルイス、リーアム・ニーソン、ヘンリー・トーマス、他


19世紀半ばのニューヨーク。アメリカ生まれの「ネイティヴ・アメリカンズ」と、アイルランド移民「デッド・ラビッツ」との間の利権を争いで父親を殺され、自らも少年院に投獄されたアムステルダム(レオナルド・ディカプリオ)は、15年後、父を殺したギャングのボス、ビル(ダニエル・デイ・ルイス)への復讐を誓い、街に帰ってきた。素性を隠し、ビルの組織に入り込むことに成功したアムステルダムはそこで、美しい女スリ師ジェニー(キャメロン・ディアス)と出逢い、急速にひかれていくのだった…。

原作は70年前に出版されたハーバート・アズベリーの伝説的ノンフィクション。スコセッシはこの作品にのめりこみ、9.11テロで撮影中断を余儀なくされるなど製作は難航したが、完成した。総制作費は約120億円。

これはアメリカのほとんど知られていない史実を元に描かれた歴史ロマンでそのあたりの事情を知らないと、理解すること自体が難しい内容かもしれない。原作は読んでから観た方がいいですね。
オープニングで子供時代のアムステルダムが戦場で父の死を目の当たりにするんだけど、「子供をそんなところに連れてくる父親がどこにいるんだ」という疑問を残しつつ、このシーンは後半への伏線となっているので外せませんね。また衣装が本格的な史劇らしくリアルなのにも驚きました。

ディカプリオとキャメロン・ディアスのラヴ・シーン。すごく肉感的で生々しいのですが、このシーンの直後にジェニーがビルのかつての恋人だったことがわかってしまうのです。このあたりでジェニーの存在自体がアムステルダムとビルの対立を際立たせるための「刺身のツマ」にされてしまった感じで、予告などでラブ・ストーリーを期待された方には肩透かしかもなぁ。

アムステルダムはビルに復讐するために彼の組織に入るんだけど、そこで彼の圧倒的な個性、人間性に惹かれて、いつしか当初の目的も忘れそうになるほど彼にのめりこむこむことになる。ジェニーとの恋はそれと並行していく。ついにビルの信頼を勝ち得た矢先に、その嫉妬にかられた親友ジョニー(ヘンリー・トーマス)の密告により、アムステルダムの正体は露見する。ここでのビルの狂乱振りはすごくて「こいつは俺の女だった」ことを見せ付けるかのようにジェニーを大観衆の前でひん剥き、決死の「ナイフ投げ」のショーを見せる。またアムステルダムをちょうど調理するかのように押し倒し、その顔に肉きり包丁(ちなみにビルが肉きり包丁を持っているのには象徴的な意味があるらしい)で「消せない傷」をつける。このシーンは映画の最大の見せ場かもしれない。この映画のために数年ぶりに銀幕復帰を果たしたダニエル・デイ・ルイス、渾身の演技です。ただ惜しいのはあれだけ追い詰めたらどう考えてもアムステルダムを殺すところまでやるだろうに(でないと後々あぶなくてしょうがない)、彼が命拾いする納得できる理由が示されないところ。もうちょっとなんとかならなかったんだろうか。

命拾いしたアムステルダムはジェニーと共に父の作った「デッド・ラビッツ」を再組織し、徐々に組織を拡大していく。こうなるのは予想できるだけに余計ビルが彼を助けた理由がなぁ、とこれ以上は言うまい。
二大組織の抗争は流血が流血を呼ぶ泥沼状態となり、ついにはニューヨークで史上最大の暴動が発生する。それはもはや「戦争」だった。かつて父がそうだったようにアムステルダムはビルとの最後の対決の時を迎える・・・。

これはどこを観るかで感想が変わってしまいそうな難しい作品。
きれいなラブ・ストーリーを期待した人にはあまりにも血なまぐさい内容が耐えられないかもしれない。現に僕が観た時も本気で気分を害してる女性が多数いたし。
ダニエル・デイ・ルイスの迫真の演技は非常に見ごたえがあるので、彼とディカプリオの「男と男」の映画だと思うと、非常に楽しめる。まぁそれでも終盤の血の量は半端ではないのでちょっと引きますが。



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