ホームへ戻りますシネマトップへ updated(first) 04/09/2003 last updated


ロード・オブザ・リング/二つの塔 (2002/アメリカ、ニュージーランド)
監督  : ピーター・ジャクソン
出演  : イライジャ・ウッド、イアン・マッケラン、ヴィゴ・モーテンセン、ショーン・アスティン、ジョン・リス=デイヴィス、バーナード・ヒル、クリストファー・リー、ビリー・ボイド、ドミニク・モナハン、オーランド・ブルーム、ミランダ・オットー、リヴ・タイラー、ブラッド・ドゥーリフ、クレイグ・パーカー、他


3部作同時に撮影、1年に1度上映という型破りな方法で製作された「ロード・オブ・ザ・リング」の第2作。今回はストーリーの紹介はお休みして(よくできたサイトが多数あるのでそちらを参照して欲しい)、原作を子供の頃読んだ僕の「勝手な思い入れ」に終始させていただきたいと思う。

中盤となるこの作品では「旅の仲間」たちが3つのグループに分かれてしまい、それぞれの展開を並行して追うというめまぐるしい構成になっている。ちなみに原作ではフロドとサムの組(以下これを第一グループと呼びます)とアラゴルン、レゴラス、ギムリの組(第二グループ)、メリーとピピンの組(第三グループ)は巻も変わっていて完全に独立しながら、時系列的には同じ話、最後の大団円に向かっていくという構成。どちらがわかりやすいかといったら僕は映画の方だと思う。グループごとの場面の切り替えは「あれはどうだった?」という感じの単発のセリフで切り替わっており、非常にテンポがよい。
まぁ本来第二部でやるはずの大蜘蛛シュロブのエピソード(第一グループ)が第三部にまわされていたり、三部作だけでなく中つ国全体のことを考えないと理解しづらいアラゴルンとアルウェンのシーンが宙に浮いた感じになってたりと欠点もあるんだけど。エルフは中つ国の覇権は既に人間に譲ってしまっていて、「西方」の楽園に避難することを考えている。死すべき人間と永遠の命を持つエルフの対比はまだわかりやすいかと思うんだけど。それにしてもエオウィン(セオドア王の姪っ子)がアラゴルンをいくら恋うても、彼の心中にはアルウェンしかないのは気の毒ですね。

前作に続いて、「魔法を使わない魔法使い」ガンダルフについて。この人冒頭からバルログ(ものすごく巨大なモンスター。実は世界に数体しかいない古代の上位種)と取っ組み合いになって崖から落ちちゃうわ、馬に乗ってパーっと援軍呼びに行っちゃうわ(「5日後に戻る」と言われてもその後の展開がすごすぎて観客にも帰ってくることを忘れられてそうな感じ)、であまりにも元気すぎる老人。まぁ「白のガンダルフ」となったときのセリフが「それじゃ説明になってないよ」って感じなのもすごいけど。
少しマジメに戻すと「二つの塔」ではガンダルフとサルーマン、二人の魔法使いの対決、どちらの言葉により説得力があるか、もテーマの一つです。
サルーマンの組織化。彼はモンスターを「生み出した」(そのシーンもありましたね)人なのでオークなどのサウロン直属の軍ににらみがきくのは当然なんですが、それ以外にもローハン領内の少数民族(こちらは人間)の憎悪の炎を呼び起こし、あっという間に大軍を組織する人身掌握術はなかなかのものです。
対してガンダルフがやったことはサルーマンに精神を支配され、奸臣グリマの言葉しか耳に入らなくなっていたセオデン王の「目を開かせる」(まぁここで唯一の魔法を使ってるんですが)ことであり、王に追放されたエオメルの精鋭を連れ戻しにいくこと。もう一つ、旧知のエント族にメリーとピピンの素性を教え、彼らを助けたこと、これも忘れちゃいけませんね。規模の大小の差こそあれ、どちらもやっていることは「ひとのこころに働きかける」ことだというのにお気づきでしょうか。同じような役割を担っているのがアラゴルンなんですが、彼はゴンドールの「王になるべき人間」なのです。彼の自己犠牲的な行動もローハンの人々をまとめ上げる力になったんですが、集団の前で自らの考えを堂々と主張するシーンとともに、戦いへの不安におののく少年に「勇気をもつこと」を静かに語りかけるシーンも重要だと思います。「民を守る」のが王の義務だということを何度も示す(後半の)セオドア王の行動も立派です。
果たしてどちらが勝つか、は三作目のお楽しみに。

すっかり順序があとになってしまったけど、このシリーズの主役フロドは今作では終始地味です。「指輪の悪影響」が彼の身体や心にも及んでいて、それに苦悩したり、「迷い」が前面に出てしまったり。忠実な友サムがいなかったら「闇にとらわれて」いてもおかしくないです。皮肉なのはそういった場面がなかったら、捕虜になった彼らが釈放されることはなかっただろうこと。ここでも「説得力」が意味を持ってきます。
彼ら二人と「第一グループ」で一緒に旅するのが話題のオールCGキャラクター(正確には俳優の演技をモーション・キャプチャリングしたのだという)ゴラム。彼の表情、動きはグロテスクな部分までよく作りこまれていましたね。ゴラムが人間にうらみを抱いた卑劣極まりない人格と、フロドを「だんなさま」と慕い信じようとする「いいほうの」人格とに分裂してしまってることが表現されてましたね。ちょっとあのシーンはサイコものみたいで気持ち悪かったですが。

と、今回は自分の好きなように書いてしまいました。
派手な部分、ヘルム渓谷の戦闘やエント族の「決意と戦い」もすごく好きで楽しんだんですが、今回はこんな感じで失礼します。

三作目「王の帰還」がまた待ち遠しいです!


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