ホームへ戻りますシネマトップへ updated(first) 06/24/2003 last updated


マトリックス・リローデッド (2003/アメリカ)
監督  : アンディ・ウォシャウスキー、ラリー・ウォシャウスキー
出演  : キアヌ・リーヴス、ローレンス・フィッシュバーン、キャリー=アン・モス、ヒューゴ・ウィーヴィング、マット・マッコーム、ジェイダ・ピンケット=スミス、モニカ・ベルッチ、ハロルド・ペリノー・Jr、ハリー・J・レニックス、ノーナ・M・ゲイ、ランベール・ウィルソン、エイドリアン・レイメント、ニール・レイメント、アンソニー・ウォン、ランダル・ダク・キム、グロリア・フォスター、ヘルムート・バカイティス、コリン・チョウ、アンソニー・ザーブ、他


※ネタバレしていますので未見の方はご注意ください!



世界的に大ヒットを記録し、その後のSF、アクション映画に大きな影響を与えた「マトリックス」の4年ぶりの続編。シリーズは3部作ということでこの2作目を観終わったあともまだ謎は残されている。マーケティング、宣伝も見事なまでにはまって予想通りの大ヒットを記録。キアヌ・リーブスの人気も再燃した。

基本設定は「マトリックス」で出尽くしているので、こちらでは冒頭から冗長な説明抜きで「その後」に突入していく。前のレビューに書いていないのでここで設定を確認しておこう。
2199年のネオやモーフィアス、トリニティらの「実体」がある世界。意思を持ったAIに支配され、荒廃しつくした地球。多くの人はその現実を見ないために「マトリックス」という電脳空間を現実のものだと信じ込み、没入していた。ネオもその世界でアンダーソンというごく普通の会社員として暮らしていたが、モーフィアスらに説得され、現実に目覚め、この世界を人間の手に取り戻そうとするレジスタンスに参加する。ネオをマトリックスに対する脅威だと認識した「システム」はエージェントというプログラムにネオを追わせる。電脳世界での死闘の末にネオは自分がマトリックスの世界法則を無視できる存在(The One、キリスト教でのイエス・キリストに当たる名称らしく、字幕では「救世主」と訳されていた)だということに気づき、この世界を救うことを決意する。
ネオらが電脳空間に没入するための仕掛けは首についた穴(ここにコンピュータを接続する)だがこれはウィリアム・ギブスン以来のサイバーパンクSFではおなじみの設定。ウォシャウスキー兄弟は他にもP・K・ディックや日本のSFアニメーション、カンフー映画にも相当のめりこんだ、いわゆる「オタク」だということだ。


「リローデッド」はここから始まる。トリニティとの愛がネオを「こちらの現実=マトリックス」につなぎとめているのだが、今回はこの部分でネオの見る「悪夢」がキーになっている。愛を知ったとき、人はそれを失うことに怯えるってことか。ベタだけど効果的な仕掛け。
モーフィアスらのレジスタンスの本拠地ザイオン(この名称はユダヤの「シオニズム」から来ているということ)が実体として出てくる。宇宙船を作れる技術力があるはずなのになぜか住民の着ているものは古代を思わせる。現実とマトリックスとの行き来がより頻繁になるけれど、マトリックス世界の方がVFXやSFX技術があまりにも進んで「自然な世界」に見えるところがなんともいえない。今回は行き来に携帯電話が必要という設定はなくなっているようだ。また宇宙船クルーとしてリンク(ハロルド・ペリノー・Jr)やナイオビ(ジェイダ・ピンケット=スミス)といった新キャラも登場している。リンクの恋人としてジーナという女性が出てきたりと少しだけ生活感も。

前作でネオに破壊されたはずのエージェント・スミス(ヒューゴ・ウィーヴィング)は、システムの命令を無視して自らの意思というかネオに対する復讐心のみで彼を追う。今回は彼が自らの「コピー」をどんどん作り出してしまうんだけど、「100体のスミス」にネオが襲われるシーンはCGの粋を駆使していて、笑っちゃうけど大迫力。

今作ではマトリックスの世界の重要人物が続々と登場する。
まず前作でも出てきた預言者オラクル(グロリア・フォスター)。彼女は世界の智恵を持っているんだけど、世界そのものへの関与はできない。マトリックスの中に生きるものとしてネオらに助言を与えることはできる、とその力の限界が示される。
それから設計者=アーキテクト(ヘルムート・バカイティス)。マトリックス世界を設計した人だということだけど彼には謎の部分が多い。「レボリューションズ」でこの謎は解かれるんだろうか。
そしてキー・メイカー(ランダル・ダク・キム)。マトリックス世界ならどんなキー(鍵)でも作れるという彼の風貌は背の低い東洋系の老人だ。後半はキー・メイカーを巡る攻防ともなり、彼はトリニティのバイクの後ろに搭乗したりと意外な(?)活躍を見せる。
この3者からわかるようにマトリックスの世界というのは現在のインターネットを中心としたコンピュータ技術から連想されるもののメタファーが数多く登場していて興味がつきない。それに宗教なども。

敵役ではエージェント・スミスがあまりにも強烈なんだけど、レジスタンスの宿敵として現れるメロビンジアン(ランベール・ウィルソン)とその一族もなかなか魅力的になりうる存在、だったと思う。彼の妻パーセフォニー(この名はギリシャ神話のハデスの妻ペルセポネーから、とのこと。モニカ・ベルッチ)はネオとトリニティのような「ときめき」をもう一度感じてみたいと(マトリックス世界のみの住人が「愛」を欲しがるというのはなにかの皮肉なんだろうか)ネオに情熱的なキスを求める。それに彼の部下の「ザ・ツインズ」(レイメント兄弟)はサラサラの金髪でかっこいい。だけど彼らにまで見せ場をつくる余裕はなかったみたいですね。ゲームなどの番外編向けのキャラかも。

アクションについては全編見所と言ってしまいたいところだけど。何回か観ないと細かいところがわからないほどのスピード感、ハイテンションです。前作では「カクカクした動き」を効果的に使っていたけど、今作では「なめらかな動き」を恐るべき技術力で実現してしまったようだ。俳優たちへのアクション面での要求も過酷なものだったらしい。
回廊でネオが「跳ぶ」シーン、一度に何人ものエージェントとカンフー・アクションを行うネオは彼が「スーパーマン」(彼が空を飛ぶシーンもあって本当にそう呼ばれる)だとしてもひたすらに快感だし。
セットで作ってしまったという壮大な高速道路のシーン。車上でアクションするネオやモーフィアスらもすごいんだけど。なんといってもトリニティがノーヘルでバイクに乗って車の間を暴走するシーン。現実的には「ありえない」場面で撮影は本当に命がけだったそうだ。このあたりは撮影方法なども興味あるけど。

ラストは次回作につなぐためにわざとらしい終わり方で残念だったけど。
単体の映画としては最初から作ってないので仕方ないかな。

アクションの質が上がり、SFとしてのマニアックな設定は奥に引っ込んだ「リローデッド」。ハイテンション、ハイエナジー、スタイリッシュと誰が観ても「すごい」と楽しめる水準にまでもってきてしまったのだからやはりすごい作品かも。僕は「マトリックス」よりもこういう方向の方が単純に楽しめて好きかな。
「レボリューションズ」も楽しみです。


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