ホームへ戻ります シネマトップへ updated(first) 03/04/2003 last updated


特集: 生涯五指には入るこの映画!

Intoroduction

(1)  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)  (7) (8) (9) (10)

(11) (12) (13) (14) (15) (16) (17) (18) (19) (20)

(21) (22) (23) (24) (25) (26) (27)


(13) 志穂美 さんのレビュー
テンペスト(The Tempest) (1979/イギリス)
監督  : デレク・ジャーマン
出演  : ヒースコート・ウィリアムズ、トーヤ・ウィルコックス、その他


シェイクスピアの原作には大変忠実。
アバンギャルドな映像作家デレク・ジャーマン監督作品にしてはスタンダードな
撮影方法。
それでもこの作品は斬新で面白い。

お嬢様であるはずのヒロインミランダのドレッド入った髪型やエッチっぽい衣装、空
気の精エーリアルのジャンプスーツ姿、大団円でのヘンな集合ダンスと「ストーミー・
ウェザー」。
古典劇に現代モノがミックスされる演出方法は今では決して新しいものではないが、
この場合は別段それによってある種の効果を狙っているわけではなく、ただ単に監督
の「ものの本質を掴むための、形にとらわれない表現方法」の結果として現れている
ように思われる。そうして描かれた「追放された元ミラノ大公プロスペローの復讐劇」
は、こまこました描写では決して表せない臨場感に満ちている。
精霊エーリアルの人間離れした雰囲気は妙な浮遊感と共にシンプルな怖さを伴って浮
かび上がってくるし、魔術で人をとりこにする場面も単純な描写で異常な状況を突き
付けて来る。それが光と闇の中で混ざりあい、ストーリーが不思議な吸引力で結末へ
と導かれて行く。
魔術や人外の存在を、映画でこれほど真実味を持って感じたことはない。CG特撮な
どとは比べられぬその土着的なリアリティーは、低予算制作の恩恵である部分も多少
はあるのかも知れないけれど。

ヒロインのミランダ役は、パンクミュージシャンのトーヤ・ウィルコックス。およそ
お嬢様っぽくない、品のない愛嬌派の彼女の存在感がストーリーの予定調和を少しば
かりずらす役目を果たしていて、そこがなんとなく面白い。プロスペローはいかにも
うさんくさい魔術かぶれおたくといった感じだし、エーリアルは弱い癖におっとり構
えたたたずまいがなんかカッコイイ。特筆すべきは、キャリバンを演ずる、リンゼイ・
ケンプ・マイム・カンパニーのメンバーjack birkettの怪演ぶり。彼が生卵を啜るシー
ンの迫力だけで「もう充分」という気分にさせてくれるのだから凄い。悪魔的な
嫌ったらしさと、なぜか憎めない可愛さの絶妙な混じり加減がすごくいい。

劇中何度も、心もとなさや懐かしさや半睡眠状態の心地よさなどをを反復して味
あわせてくれる映画。
観た後はきまって、浅い眠りに引き込まれたくなる。


ホームへ戻ります シネマトップへ