ホームへ戻ります シネマトップへ updated(first) 03/04/2003 last updated


特集: 生涯五指には入るこの映画!

Intoroduction

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(18) 街 さんのレビュー
『Uボート』 (1981/西ドイツ)
監督  : ウォルフガング・ペーターゼン
出演  : ユルゲンプロホノフ・ヘルベルトグレーネマイヤー・クラウスヴェンネマ
ン他


第二次大戦末期、ドイツが誇るUボート出撃。待ち構える数ある危機を乗り越えて
無事港に入り、出迎えの人たちの歓迎を受け・・という映画。全然ハショってるわ
けではない。実際これだけの映画。

このように短くコメント出来るくらいのストーリー構成であるこの映画、実はディレ
クターズカットだと3時間29分ある。ワタクシが持っているDVDの裏面に記載されてい
る。3時間29分で上記のストーリーだけ。だが、この長い時間の中で、戦争の狂気と
敗戦をにわかに感じる上官の苦悩や、潜水艦という限られた空間での人間模様が、こ
れほどの丁寧さで描かれた映画があるだろうかというくらいの緊迫感で描かれている
のだ。
特に『潜水艦という密室で彷徨う人間の心理、敵艦と遭遇した際の胸を締め付けられ
るような焦り』。それを回避する手段の選定。ゲームとしてでなく、リアルな戦場を
人間の心理をフィルターに描いている。そう、派手なアクションや爆発、込み入った
ストーリー(といっても大体ご都合主義的なものが多いが)で誤魔化すのではなく、出
来るだけ削ぎ落としてシンプルなものに少々味付けしたような映画。料理で言えば素
材の味を追求したもの。音楽で言えば弾き語りのバラード。

ある意味、狭い潜水艦の中で生活する兵士達に感情移入させるかのごとく、より
平凡な時間を長めに画面で味あわせる。いわゆる長回しというやつ。これにより、『時間
が経過していない』かのような潜水艦内での微妙な心の揺れ動きを堪能できる。
戦争映画というとあっちでボンこっちでボン!っていうのが好きな人には退屈な
のかもしれない。ただ、その『平穏で退屈な時間がよりリアルな人間心理を表わして
いる』のだと思う。
だから、そんなに多くの爆発も戦闘シーンも無い。それだけに映画全体に重厚さ
を与えている。特撮も時代を感じさせるところが多々あるが、そんなものに頼らなくても
リアル感は表現できるという見本のような映画。これをハリウッドが作ると大味に
なってしまうだろう。それでは意味が無いのだ。
正義も悪も何も無い。戦争という、ある意味『特殊な状況の中の普遍性』を追い
かけてるのがこの映画だ。矛盾はしていない。それが戦争なのだから・・と、観終わった
締めくくりたい映画なのだ。


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