Black Pepper’s Blog

10ミニッツ・オールダーの2作がDVDで出ていたので借りて観てみました。
劇場では「人生のメビウス」の方だけ観れてたので今回はもう片方を。

＊「10ミニッツ・オールダー/RED」（人生のメビウス）の感想はこちら。

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2003年の12月に日本公開。7月にDVD化されています。

10ミニッツ・オールダー/GREEN　（2002年）

15 人の監督による 10 分づつの映画のコンピレーションで2本の映画として公開された。副題がそれぞれ『TRUMPET（トランペット）』『CHELLO（チェロ）』となっており、各章のインターリュードとしてそれぞれの楽器の演奏が使われている。それなのに日本公開時には『人生のメビウス』『イデアの森』というよくわからない邦題がつけられ、更にDVD化に際して『RED』と『GREEN』というタイトルが新たにつけられた。ややこしい（笑）。
こちらは『CHELLO（チェロ）』=『イデアの森』=『GREEN』の方で、
以下の8作品が収録されている。

1.水の寓話（ベルナルド・ベルトルッチ）
2.時代×４（マイク・フィギス）
3.老優の一瞬（イジー・メンツェル）
4.10分後（イシュトヴァン・サボー）
5.ジャン＝リュック・ナンシーとの対話（クレール・ドゥニ）
6.啓示されし者（フォルカー・シュレンドロフ）
7.星に魅せられて（マイケル・ラドフォード）
8.時間の闇の中で（ジャン＝リュック・ゴダール）

1.水の寓話（ベルナルド・ベルトルッチ）

集団労働での移動中、イタリアで仲間からはぐれたナラーダというインド系の男。そこで偶然知り合ったカフェの店員の娘と恋に落ち。
10分の中で人の出会い、別れを描き、何年もの時の経過を表現する。
それをセリフを切り詰め、ほとんど絵だけで説明するあたりベルドリッチの真骨頂か。
モノクロの画面も雰囲気あるし、なかなかいいです。

2.時代×4（マイク・フィギス）

4分割された画面の中で、錯綜するカットをつなぎ合わせると、最後にある「テーマ」が見えてくるという。かなり実験的な作風で正直1度観ただけではよくわからない。

モニターに映る老いた両親。ピアノのある一室で愛し合う男女。自室でおもちゃの戦闘機で遊ぶ少年。彼らを訪ね、放浪する中年男。
「戦争（第2次世界大戦）なんだよ」という言葉が最後に意味を持ってくる。
ただこれちょっと難解過ぎないかな。

3.老優の一瞬（イジー・メンツェル）

りんご園の中で老人がかつての自分のことを思い返す。
少年、中年、壮年、現在と。
人生は10分で語るにはあまりにも長い。
ピアノの無伴奏ソロ以外ほとんど無音で続く。
やや凡庸かも。

4.10分後（イシュトヴァン・サボー）

結婚記念日の準備をしながら、テレビの語学番組に合わせて同じ言葉を何度も繰り返す主婦。
夫は酔って帰ってきて「ビールは？」と荒れ気味の様子。

「もううんざりなんだ」という彼は彼女に暴力すら振るおうとするが。

背景が見えてこないので、展開に納得しづらい。
淡々と流れ続ける語学番組の音声が不気味。

5.ジャン＝リュック・ナンシーとの対話（クレール・ドゥニ）

哲学者ジャン＝リュック・ナンシー（著作一覧　amazon)へのインタビューで構成。

彼の語ることは「移民を侵入者ととらえるか。同化できるものとしてとらえるか」
といった非常に難解なものだが、電車の座席でラフに行われたインタビュー自体はとてもリラックスしたものだ。

6.啓示されし者（フォルカー・シュレンドロフ）

湖のほとりのキャンプ場に来た3組の家族。
バーベキューの準備を黙々と続ける夫。ビールを飲みながらだが、うるさい虫の音に悩まされている。
車の中でクモを発見し、興奮する女の子。
妊娠して夫に「お酒は控えるように」と言われて陰でこっそり飲む若妻。
彼女につきまとう若者達のグループ。

なぜか不穏な空気が流れ。

哲学的なモノローグも流れ、思わせぶりだけど、けっこう「一発ネタ」的な
ところがあって単純に観れる。
ちょっと散漫だけど。

7.星に魅せられて（マイケル・ラドフォード）

宇宙船でタイムトラベルができるようになった。2166年にやってきたバーディ。
この時代にはアンドロイドが完璧な接待をしてくれ、地上を歩く人はもういなく、移動はもっぱらチューブ（地下鉄）だ。

「未来」の世界で「待ち続けた」かつての友人の老いた姿と再会する。
自分は若いままの姿なのに「時」の経過は容赦ない。

ちょっとSFとしては平凡かなぁ。拍子抜け。

8.時間の闇の中で（ジャン＝リュック・ゴダール）

テーマは「さまざまな最後の瞬間」。
それは戦争であったり、拷問であったり、虐殺であったり。
穏やかな死もあれば見たくもない死もある。

いらない本を「ゴミ」として処分するのも一つの別れだし。
（見たところほとんどが哲学書のよう）

「映画の最後の瞬間」として真っ白なスクリーンがひらひらとひらめく。

すごく感覚的な映像で、感想を言葉にまとめるのが難しい。
ただ個人的には「なくなる」からこそ、今現在を大切にしたいな、
とポジティブに受け止めました。

（全体を通して）

作品による出来のバラつきが激しいけど、
それなりには楽しめます。

それぞれの監督のファンの方だとより楽しめるでしょうね。
チェロの響きを聞きつつ、1本ずつ観るのも優雅でいいかも（笑）。

サントラのデータが見つかったので紹介します。

10 ミニッツ　オールダー　-人生のメビウス /　イデアの森 / Ten Minutes Older - The Trumpet / The Cello

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