Black Pepper’s Blog

不思議なほど大人受けのいい作品、「ミリオンダラー・ベイビー」。
アカデミー賞で主要4部門を独占なんてのも数ヶ月経った今ではフロックにかならないでしょう。
四の五の言わずに観ましたよ。

ミリオンダラー・ベイビー (2004年　/　アメリカ)

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監督・製作：クリント・イーストウッド
出演：
クリント・イーストウッド
ヒラリー・スワンク
モーガン・フリーマン
ほか

(あらすじ　goo映画　）
「自分を守れ」が信条の老トレーナー、フランキーは、23年来の付き合いとなる雑用係のスクラップと、昔ながらのジム、ヒット・ピットでボクサーを育成している。有望株のウィリーは、教え子を大事に思う余りタイトル戦を先延ばしにするフランキーにしびれを切らし、別のマネージャーの下へと去ってゆく。そんな折、フランキーの前に現れた女性ボクサー、マギー。マギーはフランキーの指導を乞うが、昔気質のフランキーは女のボクサーを認めようとしない。だが連日ジムに通い詰めるマギーの一本気さに、やがてフランキーの心も揺り動かされ始めるのだった。

決して派手な作品じゃない。
場末のジムの薄暗がりで「洗剤は安いので充分だ」「これを使うと香りが変わるんだよ」なんて話を淡々と続ける、老トレーナー2人（フランキー＝イーストウッドとスクラップ＝モーガン・フリーマン）。
こんなのイーストウッドじゃないともう撮れないんじゃないかな。

ハリウッドに認められてもなおも自分なりの表現を貫く姿勢は素直に拍手かなぁ。

そこに現れたマギー＝ヒラリー・スワンクも32歳。ウェイトレスをこの年まで続け、貧困から抜け出そうという手段が「ボクシング」だった。
「俺は女には教えない」というフランクの心を揺り動かしたのは、連日深夜まで黙々とトレーニングを続ける彼女のひたむきさだった。

マギーのボクシング・スタイルは超攻撃的。
1ラウンド目からラッシュをかけ、相手を一気に打ち倒す。
「これじゃ試合勘が磨けないだろ」とフランキーは彼女を諭すが、
「6ラウンドを戦い抜くスタミナはない」マギーは自分のプレイ・スタイルを変えない。

「どう、うまくいったでしょ？」
1ラウンドでケリをつけてしまう彼女は試合相手から敬遠され始めるが、
フランキーは相手のプロモーターに裏金まで払って彼女に試合をつけてやる。

「自分を守れ」
「金はすぐに消えてしまう。あるうちに自分の家を買え」

だが彼女は自分の家ではなく、生活保護を受ける母親と兄妹に家を買い、
自分の夢はあとまわしにしようとする。
しかし無断で買った家は「金をくれたほうがいいのに」と決して喜ばれない。

次の相手は世界戦。ダーティ・ファイトで有名なチャンピオンだ・・・。

一言でいうのは難しいけど、
「不器用にしか生きられない」人間を描くと
イーストウッドは本当にうまい。

現役時代をケガで棒にふったスクラップ。
トレーナー、治療師としての「魔法の指」を持ちながらも
自分の頑固さからチャンプ育成からは遠ざかっていたフランキー。
ディフェンス、スタミナに弱さを抱えながらも、攻撃的に「前に」いくことしか知らないマギー。

3人とも素晴らしい演技だし、「この3人でなければ」という存在感、説得力がある。
ボクシング・シーンの迫力もすごいしね。

ちょっとした間合い、小道具まで「こうでなければ」とうまくパーツに収まった印象すらある。

脚光を浴びる表舞台と、薄暗い中で行われる裏の地道な営み。
どちらも人生の真実なんだよ、と静かに訴えかけてくるような
この作品はやはり重いけれども素敵な映画でした。

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