宮本輝 / 星宿海への道
Book星宿海への道 宮本 輝 幻冬舎 2005-08 |
平成九年、大阪のおもちゃ会社に勤める瀬戸雅人という50歳の男性が旅行中に中国南西部カシュガル近郊で忽然と姿を消す。謹厳実直で誰からも好かれた彼には出産を控えた千春という恋人もおり、失踪の原因がまったくわからなかった。
雅人とは血のつながらない弟紀代志は、兄が幼いころからこだわり続けた「黄河の源流」星宿海にそのヒントがあるのではと、調査を始める。
雅人は幼少期を目の見えない母親と路上生活者として、暮らし、母親の死後、その死に責任を感じた紀代志の親にひきとられる。このことは一家の間ではタブーとされ、雅人も表面上はおだやかに過ごしていたが、
調査を進めるにつれ、思いもかけなかった彼の人生、心情につきあたる。
宮本輝さんは下層の人々を描くのがうまい。
どんなに悲惨な生活であれ、そこにどこか希望や美しいものを見出し、読者に提示する。
そこに含まれた叙情に、ときにはホッとし、
裏に隠された絶望にときにはゾっとする。
この本では雅人という人、それからその母親の「原風景」を追って
弟紀代志や、千春がそれぞれにたどるこころの旅路。
それがどこで出会い、つながるかというのが1つ。
旅の果てに瀬戸内の美しい島々に、新たな人生を見出す千春と雅人の子せつの姿に不思議な縁を感じ、静かに物語は終わる。
うーん、たまにはこういうのもいいですね。
(読了日 2005/9/8)
関連記事(試験運用中)
コメント/トラックバック:0 個 »
トラックバックURL: http://blackpepper.oops.jp/wp/archives/1438/trackback
この記事にはまだコメントがついていません。
コメントをどうぞ
コメント、トラックバックは確認後に表示されます。しばらくお待ちくださいね。
段落や改行は自動挿入です。メールアドレスはサイト上では非表示です。
使用できる HTML タグ: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <code> <em> <i> <strike> <strong>
コメント