小さき者へ 小さき者へ
重松 清

新潮社 2006-06
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短編集。「父と子」をテーマにした作品が並ぶ。

中から一番気にいった一編を。
「団旗はためくもとに」。

美奈子の父は元応援団長。
多摩川の川べりで今でも応援の気合をいれたり、年に1回は応援団のOB会を開いたりと一本気ながらも1本芯の通った男性。顔はこわい。
美奈子は将来のあてもなく突然高校にいくのがいやになり、「中退する」という決意を父、母に伝えるが当然ながらそれは猛反対を受ける。
美奈子は父に反発しながらも自分のほんとうにやりたいことを探そうと模索していく。

お父さんのキャラクターがいい。
なんでも「押忍」で押し通し、理屈のきらいな性格はその姿もあわせて非常にユーモラス。
美奈子も家出も考えながらもなんだかんだと父に認められる方法を考え続けるなど
父をどこかで許している部分もなんだかなごむ。

この作品でもそうだけど、各作品のどこかに
「人を信じる気持ち」「応援する気持ち」がつまっていて
読後感は不思議にここちよい。
かならずしもハッピー・エンドばかりではなく、悩み、迷い続けた主人公(主に少年、少女)
が一歩踏み出したところで終わっている作品が多いんだけど。

(読了日 2006/09/01)







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