かくれんぼ―御宿かわせみ〈19〉
かくれんぼ―御宿かわせみ〈19〉 平岩 弓枝

文藝春秋 2006-02
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第19巻。8編を収録。

「マンドラゴラ奇聞」

端午の節句のころ。
かわせみに横浜から来た弥助というものが泊まる。
弥助が出立して2日後、麻生宗太郎がやってきて「気がかりな点」として彼の持っていた薬剤を上げる。
弥助が諸方で蘭法(西洋医学)で用いる薬剤を売りさばいており、うちにんじんに似た「マンドラゴラ」が使い方をあやまると人を錯乱させる副作用を持つという。

その翌日弥助が金杉橋近くで死体で発見されるが、彼の持っていた風呂敷包みが見つからなかった。

アメリカの圧力で横浜が開港し、外国のさまざまな珍しいものが入ってくるようになる。
その中には幕閣としては好ましからざるものもあったと思われ。
目先の変わった、面白い話。

それにしても維新も近くなってきたようで、かわせみの人たちの行く末がちょっと気がかりではある。

「花世の冒険」

麻生宗太郎、七重夫婦に2人目の子供(男児)が誕生し、祝いの席がもうけられる。
めでたいことだが長女の花世は赤ん坊に両親の関心が向き、それをかわいそうに思った「かわせみ」の面々から「いつでも遊びに来るように」と招待を受ける。
あるとき花世は1人で本所から大川端の「かわせみ」へと出向く。
これがうまくいってしまったことから、とんでもないことに。

本所のあたりから永代橋を渡って大川端までというのは大人の足でもなかなかに大変だ。
「はじめてのおつかい」的なかわいらしさもあるけれど、花世という子のこのおてんばぶりは後々なかなか大変そうである。「事件」のあと花世には「髭もじゃもじゃ」というボディガードがつく。永代の元締めと呼ばれるやくざの親分だ。

なお花世は赤ちゃん言葉で東吾のことを「東吾様」から「とうたま」、るいを「小母様」から「ばばたま」と呼ぶのだという。「とうたま」と呼ばれた東吾が実の父ではないかと誤解されたのはちょっとかわいそう(笑)。東吾、るいの夫婦には子供ができないが、周りの人の子がどんどんなついてくる。

「薬研堀の猫」

柳橋の売れっ妓芸者小てるという者が飼い猫のおたまが行方不明になったと番屋に何度も訴え、話題になっている。行きがかり上調べることになった源三郎、深川の長助。
両国、薬研堀(やげんぼり)にある貸本屋の隠居彦四郎がおたまを抱いていったのを見たものがいる、しかし彦四郎は箱根に湯治に行ったきり行方がしれないという。貸本屋の源七、おたねの夫婦も猫のことで小てるに攻め立てられて弱っている。

色っぽい芸者、それに「いない猫」にひっぱりまわされる東吾ら。
これだけのアイデアでも面白い展開になるし、
オチまできれいに決まって、見事。

「江戸の節分」

旧暦では元旦前に節分がくることがある。そちらを控え、年の瀬の忙しいなか「かわせみ」に1人の客が。浜松(静岡)で料理屋をしているおかねという初老の女性だ。亡き主人の13回忌に出てきたのだという。

畝源三郎がやってきてお吉らといいかわすのはこのところ多いという「ねずみ講」の話。1人10両を「親」に払い、「親」はうち1両を手にする。10人集まれば10両という感じで上になればなるだけ上がりを受け取れる。このトリックにひっかかって財産を失ってしまったものが多くいるのだという。

日が過ぎて。麻生宗太郎から小松川から来た「おめぐみ観音」の噂を聞く。寿恵尼という尼が始めた一種のねずみ講で本所、深川のほうまではやりだしたが、信者から集めた300両あまりの金とともに寿恵尼が消えてしまったのだという。お吉は年齢から先ごろからいついたおかねが寿恵尼なのではないかと疑うが・・・。

ねずみ講という現代にも通じる話でそろばん勘定の部分も「おかしいんだけどらしい」感じでいかにも。
お金のことで苦労する人も多いけれど、なにが人にとって本当の財産か。
考え方ひとつで幸せにも不幸にもなれるというオチはさすが。

(読了日 2007/3/31)







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