初春弁才船―御宿かわせみ〈29〉
初春弁才船―御宿かわせみ〈29〉 平岩 弓枝

文藝春秋 2004-10
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star江戸の情緒と人情と・・・
star江戸の春に乾杯!(表題作に宛てて)
starかわせみファミリーは健在です

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第29巻。7編を収録。

「初春弁才船」

その年の新酒を江戸に運び込む新酒番船が大阪から二日半でつき、話題となるが一隻帰ってこない船がある。船頭岩吉の子航吉は洋船の技術を和船(弁才船、千石船という帆船)に生かしたいと東吾に弟子入りを願う。航吉が必死の努力を続ける中、四国沖で岩吉の船が見つかったとの知らせが。

東吾の本領である海の知識がいよいよ生かされる。
弁才船は海流が複雑で岩礁の多い日本近海ではかなりリスキーな、難しい航海をしいられるものであるなど意外な豆知識が。ここで役にたったのが海図と磁石という西洋の海洋技術である。

「丑の刻まいり」

金太郎とからかわれていたお石も「かわせみ」に来て4年。お吉に次ぐ古参となりすっかり店の顔となっていた。そんなお石の田舎の知り合いでおうのという者が「かわせみ」を頼ってくる。麻布の飯倉の小物問屋に嫁いでいたのだが姑に、「丑の刻まいり」をしたと言いがかりをつけられ、追い出されてしまったのだという。「辛未(かのとひつじ)」の年、ちょうど50の者を呪っていたといい、姑のおとよがその年なのだという。

ついに決心しておうのが夫の冶之助と家を出た直後、おとよが深夜の寺院で丑の刻まいりの格好で何者かに殺される。

どろどろとした話になりそうなところだが、けなげな「がんばる人々」、それに千春まで完全にるいの味方についての「女談義」に救われる感じ。おもしろい。

「メキシコ銀貨」

麻太郎と源太郎が操練所から帰るはずの東吾を待って江戸湾ぞいで播竜丸という帆船を眺めていると、高橋という橋の上で大男がひったくりにあうのを目撃してしまう。泥棒を追いかけた2人だがすんでのところで取り逃がしてしまう。男が投げつけてきた包みに銀貨が入っていた。東吾によるとメキシコのドルラルという銀貨だという。

包みを盗まれた男も行方をくらましていることからこの事件の背後に禁じられた外国との金銀の取引が見え隠れする。

この回では最終的な解決がつかずに次巻に続くのだが。
麻太郎、源太郎といった「キッズ世代」が大人顔負けの活躍を見せ、雰囲気が変わってくる。東吾も「やれやれ子守か」といいながらもまんざらでもなさそうである。

(読了日 2007/5/12)







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