江戸の精霊流し―御宿かわせみ〈31〉
江戸の精霊流し―御宿かわせみ〈31〉 平岩 弓枝

文藝春秋 2006-04
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第31巻。8編を収録。

「野老沢の肝っ玉おっ母あ」

「かわせみ」の女中お石は「野老沢(ところさわ、埼玉県所沢の旧称)」の久米川宿という宿場の近くの生まれ。あるときかわせみに姉のおてるが訪ねてくる。おてるは同村の徳三という男と所帯をもったのだが、徳三とともに江戸に出てきて、ようやく時間ができたので妹のもとを訪ねたのだという。小さな子供がいるのだというが、あいさつもまともにできない、どこかくずれた印象があり、かわせみの面々は心配する。

徳三がつとめているといった浅草の野老茶屋には彼の姿はなかった。実は屋台でとろろ汁を商っており、そのことでかわせみの店頭でおてると大げんかする。
数日後、おてると徳三は子供とともに相次いで江戸から去ってしまう。お石は故郷の野老沢に1度様子を見に行きたいと願い、東吾はお石、お吉を連れて久米川宿を訪ねる。

おてるの子は老いた母親に預けられていた。
「もう一人ぐらい、なんということはない」という彼女の肝っ玉に東吾らは感心する。
おてると徳三の姿は後に江戸の別の場所で見かけられ、無事に暮らしてはいるようである。

「江戸の精霊流し」

「かわせみ」では女中が折悪しくあいついでやめることになってしまい、人手が足りなくなる。
桂庵という紹介所から紹介されたおつまという新しい女中はなかなか気が利いていておるいやお吉も「これなら」と安心する。
ところがおつまは以前の奉公先である深川の茶屋の主人から後妻に来てくれないかと頼まれ、迷っているのだという。
盆に故郷に墓参りに行くというおつま。東吾は千春らと浅草に遊びに行くが、そこで出かけたはずのおつまを見かける。

よく気がつく、きっぷのいい女。こういう人は当然もてるわけで。
野暮なことは言わない。それもやさしさだろうか。

「北前船から来た男」

麻太郎と源太郎を連れて舟釣りを楽しむ東吾。思わぬ大漁にわく3人だが、そこで知り合った若い船頭は卯之吉といって見事な竿さばきを見せる。北前船にずっと乗っていてこのほど江戸に戻ってきたのだという。

麻太郎と源太郎はその後も卯之吉に会い、海の話を聞いたり、舟の扱い方を教わったりしていたが、ある日八丁堀で同心を尾行する卯之吉を見かけてしまう。いつもの明るさとはうってかわった影のある表情だった。

卯之吉の過去になにがあったのか、それが鍵になる。
今回は麻太郎と源太郎が捕り物の主役となるのだが、この2人は家族にその話をしたり、相談する相手が長助だったりと情報は筒抜け。しっかり大人たちはフォローしているのであった。

(読了日 2007/5/22)







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