高野 秀行 / ワセダ三畳青春記
Bookワセダ三畳青春記 | |
高野 秀行
集英社 2003-10 おすすめ平均 |
早稲田のオンボロアパートに10年あまり住んだ
「あまりにも長いモラトリアム青年」の物語。
一応小説仕立て(登場人物は著者をのぞいて仮名)とのことだが
大部分を事実に基づいているという。
著者は早稲田大学探検部のリーダー格で
世界の秘境を旅するが、戻ってくるのは早稲田の「野々村荘」。
風呂なし、3畳で1ヶ月の家賃は1万2千円。
70年代ではなく90年代、バブルの絶頂から崩壊にかけての時期の話だ。
気のいい管理人のおばちゃんにケチで妙なこだわりを持つ個性豊かな住人たち。
すごく貧乏なはずだが、不思議と陰惨さや暗さはない。
それはたとえば風呂に行く金がないからプールに行くのではなく、
プールに行ったらきれいになるから風呂に行く必要がない、とか。
カレーライスなど決まった食事を20食以上連続して食べても平気だとか。
そういうことをあっけらかんと言ってのける著者の
「のほほんとした明るさ」のせいもあるだろう。
探検部の後輩も次々とこの変わった先輩(卒業後も野々村荘を拠点に世界放浪を続け、
いわゆる「サラリーマン」にはならない)の元に集まってくる。
そういった「青春記」であると同時に、青春には必ず終わりがある。
ある女性にほれてしまったことから住みなれた早稲田、自由な生活から
「大人の生活」に踏み出そうとする、その背筋はしゃんと伸びている。
なんともバンカラな魅力に満ちた、汗臭い1冊である。
(読了日 2007/6/24)
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