ビデオで「ダンサー」(2000年、フランス)を観ました。

リュック・ベッソンが原案・脚本を手がけたことで有名。ベッソンの副監督を長く務めたフレッド・ギャルソンの初監督作品。
インディア(ミア・フライア)はブレイズ(ドレッドロックスを更に進化させたような髪型)が印象的なダンスが好きでしょうがない黒人の女の子。兄のジャスパー(ガーランド・ヴィッド)と共にブロードウェイの舞台を夢見て日夜練習に励み、子供たちにダンスを教えていた。だが彼女は耳こそ聞こえるものの声が出せないという障害を持っていた。手話とダンス、それが彼女の持っている「ことば」だった。

アイザック(ロドニー・イーストマン)は研究室に閉じこもりがちな「オタク」白人研究者。「たまには楽しめよ」とDJの友人に連れていかれたクラブ「ユニコーン」でインディアのパフォーマンスを見て強烈なインスピレーションを受ける。
一方インディアはブロードウェイのオーディションに挑戦し、最終選考にも合格するが「言葉が喋れない」ことを理由に出演を断られる。アイザックはインディアにもう1度会いたいとユニコーンに行くが既に彼女はやめたあと。ジャスパーの友人ブルーノに警察だと偽って強引に兄妹に面会し、インディアに「研究」に協力して欲しいと頼み込む。それはダンスなどのボディ・ランゲージを音声に変換して、言語困難者に「ことば」を与えるという夢のようなプロジェクトだった。

なんといってもミア・フライアの圧倒的なダンス・パフォーマンスが目を惹く。この素材がなかったらこの映画は存在しなかっただろう。「ことば」よりも雄弁な鍛え抜かれた肉体美を見せてくれる。また音楽もHIP HOP、ハウス、エレクトロ等々と多彩で非常にノリが良く、映画全体をミュージック・ビデオのような躍動感で包んでいる。サントラも欲しいなぁ。

インディアとジャスパーの関係が非常によく描けている。ジャスパーはインディアのマネジャーを自認して彼女の夢にかけているが、大口ばかり叩く裏には自分の仕事がどうしても長続きしないという問題を抱えていた。インディアが自分からやりたいと意思表示したアイザックとの研究をなかなか認めることができないのも「本当に妹が成功したら自分はもう必要なくなってしまう」という怖れからだろう。その悩みをブルーノにぶつけるが、ブルーノは彼のスタンドプレイのせいで1度職を失っているにもかかわらず「お前らは兄妹だ。それは変わらない」と静かに言ってくれる。このことで迷いを捨てたジャスパーは「マネジャーをやめてもいい」と言う。より大きな成功のために妹を「呪縛」から解き放とうとしたのだ。

それから気にいったのはアイザックとインディアの初デートのシーン。どこでも同行していたジャスパーから離れついに二人きりになったんだけど、レストランに入ったもののまともに注文すら出来ないアイザック。そんなとき彼女の「ことば」の方がはるかに役に立つことに気がつく。研究と同時に彼は手話も勉強し始める。

全編をダンスのエネルギーで包みながら、語るべきテーマは過不足なく伝わってくる秀作。
特に「最近元気ないなぁ」という友達のいる貴方、元気回復の特効薬になるかも。







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