話題の「バカの壁」(養老孟司/新潮新書)を読みました。

「バカの壁」というのは自分の中にある思い込みで判断して、その枠の中でしか物事を考えようとしない態度から生まれる。自分の側から壁を作ってしまうから、それ以外の可能性、本当の姿を知ることはできないし、それ以上進歩することもない。著者はこういった「考えない態度」が戦後50年を通して蔓延して、現代の様々な問題を引き起こしているという。「たった一つの答え」を求める態度は科学的、演繹的な考え方においては基本的なことだが、そういった姿勢がともすれば宗教的な「一元論」に傾きかねないことを警告しているのだ。

そういった話から専門の大脳生理学の知識を駆使した本論へと入っていく。といっても細胞が毎日生まれ変わっていくことから、自分が「不変」だと感じている自分の身体、意識そのものが「変わる続けるもの」であること、イチローや松井、中田らの天才的な動きを生み出す頭脳の働き、などその筆致はあくまでわかりやすい。
オウム真理教のような大人が見れば明らかにおかしい集団に多くの若者がなぜ惹かれたか。大学生の居眠りを考察するなど身近な視点からの意見も多い。見新しいところでは「個性」「自由」を追求するよりも「相手の気持ちを尊重すること」を子供の頃から叩き込んだほうがいいという見方。このあたりは賛否両論だろうけれど、かえって著者が批判している「一元論的に傾きがちな作今の『愛国的な人々』」に「論理矛盾だ」と攻撃されそうな気もしますね。

ともあれ2日間で読みきってしまいました。シンプルでわかりやすいのは確かです。
便乗本として「バカ上司の壁」なんてのもありますね。寒いタイトルですね。







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