DVDで「ディナー・ラッシュ」(2001年、アメリカ、ボブ・ジラルディ監督)を観ました。

NY、トライベッカ地区にあるイタリアン・レストラン「トラットリア・ジジーノ」。最近この店はガンガン客足が伸びている。というのもシェフのウードと副シェフのダンカンの腕が評判を呼んでいるせい。店はウードの父のルイス(ダニー・アイエロ)のもので父は息子の腕を認めつつもまだ店を譲るのには少し早いと思っている。
これはそんな「トラットリア・ジジーノ」のある一晩に起きた物語。

冒頭でルイスの旧友エンリコが殺される。店から出てくるある「不審者」に気づいたからなのだが。
その晩の店は客が次々と押し寄せ、厨房はまるで戦場のようだった。
新米にウードの厳しい声が飛ぶ中、ダンカンは賭けバスケットに夢中になっていた。以前はルイスが胴元をやっているのに賭けていたが「もうやめておけ」と断られ、街の評判の悪いギャング「ブラック&ブルー」に賭けを頼みつつ、負けこんでいた。仲間の制止を振り切り、ダンカンは有り金の2倍の1万3000ドルをつぎ込む。「ブラック&ブルー」の二人は店にやってきて、その借金をカタにルイスに「店の経営権をよこせ」と無理難題をねじ込む。
店の常連、画商のフィッツジェラルドは注文の細かいうるさい客。ウェイトレスのマルテガはそんな彼の扱いもなんとかこなしていくが、今日の彼は若手画家を連れて来ていていつも以上にやっかいな客となっていた。もう一人の中国系のウェイトレス、ニコーレはウードともダンカンともつきあっていて彼女なしでは店が「まわっていかない」頭のいい女性。ルイスとウードの話し合いは袋小路に入る。ルイスの元にはエンリコの娘が一人娘と現れる。

そんなとき、突然の停電。真っ暗になった店ではロウソクが灯され、急遽1ドリンクをサービスする。さらにバーテンのショーンが即興でクイズを客に出させてそれに次々に答えていくことで場を持たせようとする。
「やれやれなんて夜だ」

そんな中、またお客が。NYの有名料理記者、カラータ。彼女の記事でこの店の評判はまた上がるかもしれない。だがダンカンは1万3000ドルの賭けに負け、追い詰められた彼は「ブラック&ブルー」の二人への料理に殺鼠剤を入れようとするが、思いとどまる。料理をほっぽり出して出て行った彼をニコーレが追う。

明かりが点く。
ニコーレはダンカンに「一緒に生きましょう」と迫り、エンリコの娘はルイスに「すべては変わってしまったわね。新しい世界にようこそ」と呼びかける。だがルイスは彼女との間に新しい関係が生まれる予感を感じる。そして息子に店を譲る決意も。だがそれには店にまつわるある「負債」を清算する必要があった。

スタイリッシュでスピード感のある映画。
矢継ぎ早にかわされる料理や材料の名前、火の中から生まれ出る一つ一つの料理、それを作り、運ぶ人々、全てがエネルギッシュだ。陰影のつけ方や絵造りもちょっとやりすぎなぐらいにスタイリッシュだ。まぁ僕はいまだにこういうの嫌いになれないんですけど(笑)。
登場人物の一人一人がまた生きている。ルイスとウード、さらにダンカンも交えた「わかりあえない親子関係」が一番の柱なんだけど。ちょっとした脇役にも細かい目配りが。店に自分の絵を飾り、密かに画家への夢を持ち続けるマルテガ、カウンターで「ここでは有名人が見られる。俺はそれを見に来てるのさ」とうそぶく優男、さらにルイスに名前を覚えてもらえないウードのお気に入りの新米、それに妙なプライドに生きているウェイター、アデミールなど。

見終わった後に不思議な温かみが心に残る。
ちなみにこの夜の店のお客は263人。新記録だという。

この映画はすごく気に入ってあとでDVDを買いました。







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