ヴェネツィア映画祭で銀獅子賞を取ったということで北野武監督の「座頭市」が話題になってますね。観た人から「面白かった」という声もよく聞きます。これは観とくべきかな。

僕も引きづられて(笑)、前々から気になってた「Dolls」をDVDで借りてみました。色にこだわった映像美が楽しめるのではないかと思ってたんですが。。。

*少しだけネタバレありです。

話は3つのエピソードから成っていて。
佐和子(菅野美穂)と松本(西島秀俊)が放浪の旅を続ける幻想的なシーンが一番の柱になってます。佐和子は結婚を約束した恋人に去られたのを受け入れられずに、精神的におかしくなってしまう。
実生活の部分ではその恋人と別れる過程やどんどん自分の殻に引きこもっていく彼女の姿を描いているんだけど。
それが松本とひたすらに「さすらう」シーンとどうつながるのか、セリフが極端に省略されているせいもあってわかりづらかった。夏の海辺、美しい紅葉、雪景色と四季を超えて歩き続ける2人の姿は儚げだ。
2人は「つながり乞食」と称して赤い糸を互いの手に結んで歩いていくんだけど、これが彼女の「こんがらがってしまった心理状態」を表してるのかなぁ、と乏しい想像力で考えてしまったりするんですが。
冒頭で文楽の「道行(みちゆき)」が長廻しでうつるんですが、その2つの人形がいつしか2人の姿に重なっていくところなど、意味深です。

他の2つは。
貧乏な恋人に弁当を作ってやるのが楽しみだった女(松原智恵子)。恋人は甲斐性がないからと自ら去っていくが、彼女は弁当を作り続ける。公園で会ったヤクザの親分(三橋達也)とだんだん親しくなって。。。
どうしてもエピソードにヤクザをからませてきてしまうのがたけし監督らしいけども、三橋達也の演技がいいのでまぁまぁかな。

オタクたちの羨望を集めるアイドル春奈(深田恭子)。事故で顔に傷を負い、引退するが、彼女の元にはファンが次々と訪れる。中でも熱心な「心の中の春奈ちゃんを大事にしたいから」と目をかくして現れる青年に春奈はようやく会う気になるが。。。

どのエピソードも悲しさが前面に出ていて、正直見ていて「楽しい」ものではない。
でも北野監督の「絵で説明する」姿勢は思いがけない新鮮なシーンをいくつか生み出していて、それを見ている分にはまぁ面白い。静止画で突然ヤクザが3人現れたり、その理不尽なまでのふてぶてしさとか、佐和子の両親の整理が行き届いている家とか、そういったものが幻想的な「道行」と並んでなんのてらいもなく、ポンと入ってくるところが北野映画の真骨頂なんじゃないかと、個人的には思うんですが。

静かな、きれいな映画ではありました。







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