あなたは収監される。残された時間はあと25時間。
その限られた「自由な時間」をあなたならどう使う? 誰と過ごす?

25時 (2003年 / アメリカ )

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麻薬のディーラーをしていたモンティ(エドワード・ノートン)は何者かに密告され、7年間の服役が決まる。自由な時間はあと25時間。
恋人のナチュレル(ロザリオ・ドーソン)はピリピリする彼を気遣うが、モンティは実は彼女が自分を密告したのではとの疑いを捨てられない。更に「顔のいい男は刑務所ではおもちゃにされる」との噂も彼を苦しめていた。
モンティは旧友のジェイコブ(フィリップ・シーモア・ホフマン)、フランク(バリー・ペッパー)を呼び出し、いきつけのクラブで「最後の晩餐」を過ごそうと思う。

キャラクター設定がとてもよくできている。
エドワード・ノートンはまり役のモンティは調子がよく、スキだらけの態度でどこか憎めない。麻薬を子供に売り始めた頃からどんどん生活のほうは崩れていったのだが、そんな彼を現実に引き止めていたのが、
ナチュレルと愛犬ドイルの存在だ。

ドイルとの出会いは冒頭で描かれる。
車に轢かれてボロボロになっていたドイルを最初は「仕事(密売の帰りで追われていた)の邪魔だ」と撃とうとするが、突然気を変えて
「こいつは根性がある。まだ死ぬべきじゃない」とトランクに詰めて連れ帰る。
このあたりで彼のブレがちな自我が観客にもわかる。
一言でいうと「アブナイ、読めないヤツ」なのだ。

旧友のうち、ジェイコブは実直な高校教師。ルックス的にも一足先に中年の仲間入りをしてしまったような彼。
だが「その夜」行ったクラブで教え子の色気過剰な女の子に迫られて、
彼の「道徳的な世界」は崩壊の危機にさらされる。

フランクはウォール街の腕利きディーラー。上司の指示をギリギリまで無視して自分の勘にかける。今日もなんとかその勝負には勝った。
だが彼のアパートは9.11テロで崩壊したあのツイン・タワーのすぐ近くにあり、毎晩「グラウンド・ゼロ」を眼下に眺めている。

ナチュレルは高校のときモンティにナンパされ、つきあうことに。
クラブでも一際目をひく美貌、スタイルだが、「今夜の彼」につきあうのは
彼女にもきつい仕事だ。

モンティの父親はブライアン・コックスが演じているが、彼には終盤に見せ場がある。なのでここでは触れないでおこう。

モンティがするのは思い出の学校を訪ね、ナチュレルとアパートで口論し、クラブでいろんな男たちから「ムショでの暮らし方」のご託宣を聞き、またある種の「ケジメ」をつける、そんなことだ。
だが本当に彼が望んでいたのは・・・。

スパイク・リー久々の新作だが、今回の作品はアイルランド系ニューヨーカーが主役ということで人種色は奥に引っ込んだ形だ。
もっともモンティがニューヨークのありとあらゆる人種に人知れず不満をぶちまけるシーンや、ナチュレルが美しく、裕福ではないが貧しくもない中流のプエルトリカンであることなどさりげなく人種問題も入っているけれど。

それ以上にここで感じられるのはスパイク・リーのニューヨーク、そこに住む人たちへの愛情、感傷のようなものだ。グラウンド・ゼロ、ハドソン川が「日常のもの」として繰り返し現れ、モンティがそれらにも
「別れを告げなければいけない」ことが伝わってくる。

ある種普遍的な魅力をたたえた秀作。

恵比寿ガーデンシネマでロングヒットを記録した。







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