〈競争優位〉のシステム―事業戦略の静かな革命
加護野 忠男

発売日 1999/10
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「競争優位」のシステム―事業戦略の静かな革命
(加護野 忠男 (著) / PHP新書 / ISBN: 4569608515 / (読了日 : 2004/3/22 )

「モノが売れる」には2つの段階がある。
・個々の商品、サービスでの差別化
・事業としての仕組み(システム)での差別化
である。
日本の現在の大企業は単発の商品開発だけではなく、
「勝てる事業システム」を作り上げることで長期的な成功を収めてきた。
変化(進化)する事業システム、その構築法を考えてみた本。

最近における変化の背景
1.事業システムの寿命あるいは成熟化
2.情報・通信技術の進歩
3.新しい事業システムの成立が他の事業システムの変化を促す
4.新しい事業システムを作らないことには顧客に価値が提供できないような事業分野が増えてきた

この中でも2の情報・通信技術の進歩が表面的には注目されている部分だが、それだけに目を奪われてしまうことは危険である。
本当に大切なのは、顧客に価値を提供し、競争相手が真似ることが難しい、場合によっては競争相手に真似することを諦めさせてしまうような事業システムをつくることである。

事業システムとはなにか

モノを生産し、流通させるためのしくみそのもの。
それには無数の活動と調整が必要となる。

「人」の活動をいかに調整するか
・どの活動を自社で担当するか。 →事業の「幅」と「深さ」を選択
・社外のさまざまな取引相手との間に、どのような関係を築くか。

「スピードの経済」
スピードそのものが顧客価値を高める。
受注情報をすばやく処理する情報システム、
配送ネットワークの整備で次のことが実現された。
・翌日配送システムによる顧客満足度の上昇
・在庫回転率の上昇。ファルマ、コンビニ・チェーンなど。
・売れ残りのロスの削減。販売店からの情報で生産高を調整。
コンビニのPOSシステムからベネトン、オゾックなどのファッション業界まで。
・商品切り替えコストの削減
・受注生産方式。パソコン・メーカー、デルのBTO方式。

「組み合わせの経済」
顧客満足を高める組み合わせとは。
・情報や知識の多重利用ができる
・異質な情報を総合することによって判断の質を高めることができる。

「引越し」+「家具買い替え」 → アートコーポレーション
「セキュリティー技術」+「医療」/「電脳塾」/「浄水器の販売」 →セコム

企業の中に蓄積された情報をいかに「つかえる」ようにしていくか。
組織体の中である部署の得たり、作った情報を元に別の部署が
生産、調整をするなど「アクション」を起こす。
それらの有機的なつながりが「まわりはじめた」ときに大きな力となる。
ここでは「ストック情報」「知的情報」「外部蓄積情報」などの言葉で説明されている。

「集中特化と外部化」
経営資源を得意な分野に集中し、それ以外の事業を外部化することで
効果、成果を期待する。
事業には開発、製造、販売、調達、さらに人事、財務、総務など様々な段階があるが、このうち自分達の得意な業務活動に集中し、それ以外は他にゆだねるという姿勢もその一つだ。

集中特化には以下のメリットがある
・緊張感が生み出される。
・独自能力(コンピタンス)の強化
・情報が自然に集まるようになる
・事業コンセプトの明確化

ただし集中特化はハイリスク、ハイリターンを伴うことも忘れてはならない。

外部化のメリットも様々挙げられるが、まとめると
・競争原理の導入により、社内の人々の意欲をより高め、スピード化もはかれる
ということになる。
外部化にも様々な方法、段階がある。

これらの点で得られた「競争優位なシステム」をいかに維持するか。
人や組織が腐敗するのはたやすい。
一度確立した、しかもうまくいっているシステムは仮に時代に合わなくなったとしても
リプレースしていくのは至難の業だ。
様々な要素が互いに支えあっているシステムはなかなか変えることができない。
したがって一人勝ち企業といえどもその「弱さ」を認識し、「勝ち続けるための戦い」を続けなくてはいけない。

うまくまとめたとは言えないが本書の要点は以上かと思う。
1999年発行とやや古いけど、現在にも通用する点もいくつもあると
思ったのだがいかがだろうか。

(読了日 : 2004/3/22 )







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