真珠の耳飾りの少女 (2002年 / イギリス)

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監督: ピーター・ウェーバー
出演:
スカーレット・ヨハンソン
コリン・ファース
トム・ウィルキンソン
キリアン・マーフィ

(あらすじ goo映画
17世紀のオランダ。画家のフェルメールの屋敷で使用人として働き始めたグリートは、ある日、アトリエの窓拭きをしたことで光を変化させ、フェルメールの創作意欲を刺激する。やがてフェルメールは、グリートの色彩センスを見抜き、彼女に絵の具の調合を手伝わせるようになるが、2人の関係はフェルメールの家族の嫉妬を呼ぶ。その頃、パトロンのファン・ライフェンが新たな集団肖像画を注文した。ファン・ライフェンに挑発されたフェルメールは、グリートの肖像画を描くことに。

絵画の世界、17世紀のオランダを見事に再現した画面にはひきつけられる。
果物や野菜はそのまま静物画になりそうだし、フェルメールの屋敷の調度品、そのうす暗がりからたちのぼる気配、街頭風景。
それに人物達の着ているものやその肌の色。
特にグリートを演じるスカーレット・ヨハンソンのかもしだす雰囲気は抜群だ。

話としては。
前半の「絵を描くことになるまで」が思った以上に長かった。
グリートの屋敷での奉公ぶりや、気難しいフェルメール(コリン・ファース)に、なにかとグリートにつらくあたるフェルメールの妻(キリアン・マーフィ)と母、などのキャラクター描写が長い。
グリートはボーっとしがちで屋根裏のアトリエで掃除しながらも絵をぼんやりと眺めているなど、あの妻でなくても一言いってやりたくなるようなキャラだ。

前半はこんな感じでやや退屈だが。

フェルメールがグリートを妻に内緒でモデルにし始めるあたりからグッと面白くなってくる。妻の耳飾りをつけるように指示され、最初は抗うが、「パトロンのため、ひいてはだんなさまのためなのよ」とフェルメールの母からも強制され、耳飾りをつけることに。
このピアスの穴を開けてやるときの2人にはけっこうエロスを感じたのだが。
グリートは「心まで描くのですか?」と言うし、その反動でボーイフレンドの肉屋の少年とはあらあらしく抱き合う。更にパトロンのライフェンにも狙われるし。
ピアスと青いターバン。これだけで彼女が「地味な小間使い」から
「非日常の絵画の世界」の住人に変わってしまうというのも面白い。

妻は自分でなく、若い女がモデルだということに嫉妬する。
「作品」を見れば夫がどんな感情を抱いているか、勘のするどい女にはわかってしまう。
更にあの耳飾りが怒りに火をそそぐ。

「芸術」を追い求めた2人には現実の「裁き」が待っている。
愛、というよりもやはりこれは「芸術」と「現実」との戦いを描いてるんじゃないだろうか。

フェルメールには資料が少なく、「真珠の耳飾りの少女」も作成された経緯は謎のままだ。

あの不安げな、緊張しながらこちらを見る少女。
そこからこの映画(原作小説は300万部のベストセラーだということ)のモティーフが生まれ、スカーレット・ヨハンセンの身体を借りて、「こうであったかもしれない世界」を作り出した。
非常に映画的だし、余韻の残る作品。

参考サイト

オランダ政府観光局
「青いターバンの少女」(真珠の耳飾りの少女)が展示、紹介されています。







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    1. ◇青いターバンの少女

      ふとしたことで知ったヨハネス・フェルメールの代表作品「青いターバンの少女」。
      個…

      トラックバック by アップアップ! 〔ブログ版〕 — 2004/8/19 木曜日 @ 2:11


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    3. 真珠の耳飾りの少女

      ■スクリーンに映る濃密な映像

       秋、スポーツの秋、食欲の秋、そして芸術の秋。まぁそんなとってつけたような理由で何かと騒がしい秋だったりするのだけど、鹿児島…

      トラックバック by 【銀太郎的映画感想文】 — 2004/10/19 火曜日 @ 6:06

    4. 【真珠の耳飾の少女】

      スカーレット・ヨハンセン、コリン・ファース出演の
      ヒューマンドラマ。
      公開日:4月10日

      ☆ストーリー☆
      1665年、オランダのデルフト。

      トラックバック by ココアのお部屋 — 2004/10/19 火曜日 @ 8:31

    5. 真珠の耳飾りの少女

       

      監督:ピーター・ウェーバー
      出演:スカーレット・ヨハンソン、コリン・ファース、キリアン・マーフィー 他

      レビュー
      Amazon.co.jp

      トラックバック by Cat Tail * cinema — 2004/10/19 火曜日 @ 12:35


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    7. 真珠の耳飾の少女

      最近すぐにDVD化してくれるのが本当に嬉しいです

      『真珠の耳飾の少女』、すごく見たくて、公開最終日に見に行く予定だったのに行けなくなってしまってDVD化を…

      トラックバック by carintou — 2005/1/10 月曜日 @ 11:51

    8. 「真珠の耳飾りの少女」

      「真珠の耳飾りの少女」

      公式サイト

      監督:ピーター・ウェーバー

      出演:スカーレット・ヨハンソン、コリン・ファース

      この映画、映画館で…

      トラックバック by Rabiovsky計画 — 2005/1/16 日曜日 @ 2:02

    9. 「真珠の耳飾りの少女」〜セリフつき日曜美術館

      2003年英/ルクセンブルク監督/ピーター・ウェーバー主演/スカーレット・ヨハンソン コリン・ファース トム・ウィルキンソン17世紀のオランダ。タイル職人の父が失明したため、少女グリートは画家ヨハネス・フィルメールの家に下働きに出る。美しい彼女は彼の目に留……

      トラックバック by お茶の間オレンジシート — 2005/10/5 水曜日 @ 17:42

    10. 真珠の耳飾の少女

      メディアファクトリー
      真珠の耳飾りの少女 通常版
      (2003)

      出演 スカーレット・ヨハンソン (グリート)
          コリン・ファース (ヨハネス・フェルメール)
          トム・ウィルキンソン (ファン・ライフェン)
          キリアン・マーフィ (ピータ…

      トラックバック by ベルの映画レビューの部屋 — 2005/12/29 木曜日 @ 17:58

    11. 映画 * 『真珠の耳飾の少女』

      メディアファクトリー
      真珠の耳飾りの少女 通常版

      初めてスカーレット・ヨハンソンを見たのは『バーバー』だった。
      ローティーンらしい仏頂面と貫録を感じさせる色香、
      そして意外なダミ声のアンバランスさが記憶に残った。

      謎の多い画家フェルメールのなかでも最…

      トラックバック by 複数恋愛進行中ブログ — 2006/3/7 火曜日 @ 15:27

    12. 真珠の耳飾の少女

      GIRL WITH A PEARL EARRING
      [DVD/レンタル]
      GAGA/東北新社

      『心まで描くの…』
      「色」については、八ちゃんうるさいです。
      別に絵描きではありませんが、絵やイラストを見るのが大好きです。そんなわけで、グラフィックソフトもいろいろ持っているわけですが、その中…….

      トラックバック by 八ちゃんの日常空間 — 2006/9/17 日曜日 @ 20:34


    コメント


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    1. TB、どうも。
      遅ればせながら、やっと観ることができました。
      直接的な表現がないのに、あんなに淫靡に感じられるあたりは
      日本っぽい表現方法だなぁとも思いましたね。

      コメント by 銀太郎 — 2004/10/19 火曜日 @ 5:49


    2. Deprecated: Function ereg() is deprecated in /home/users/1/oops.jp-blackpepper/web/wp/wp-content/themes/glosyblue-1-3/comments.php on line 87

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    3. >銀太郎さん

      この映画、あの「絵」からのイマジネーションの飛躍が素晴らしいですよね。
      あのモデルの少女も実在したかどうかすら
      不明だという。

      芸術家のワガママな部分と、ドロドロした部分
      (あの奥さんとか、グリートと恋人の少年の
      場面とか)隠微だし、きれいに撮ってあるなぁと思いましたよ。

      コメント by Black Pepper — 2004/10/20 水曜日 @ 0:30

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