ホームへ戻ります ブックトップへ updated(first) 01/15/2003 last updated

特集: フィリップ・K・ディック
     映画と原作を徹底比較! 「ブレードランナー」から「マイノリティ・リポート」まで

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(3) スクリーマーズ

「変種第2号」

原題:Second Variety
(「ディック傑作集@ パーキー・パットの日々」、早川書房、ハヤカワ文庫SF、所収。( amazon / bk1 )かつて「ザ・ベスト・オブ・P・K・ディック」というタイトルでサンリオ文庫から出ていたものを改訳。)


米ソの戦争が続く世界。両国の政府機能や住民は月へと移動し、地球上は米軍の開発した「クロー(鋏)」という虫型殺人機械が跳梁跋扈する荒涼とした戦場と化していた。ある日、米軍将校ジョセフ・ヘンドリックス少佐はクローが殺したソ連兵の身体を調べて、ソ連がアメリカと交渉を望んでいることを知る。隊員同士議論になるがどうやら休戦らしい。勝利の日がやってきたのだ。

ソ連の陣営に向かう途中、ヘンドリックスは廃墟で少年を見つける。名はデイヴィッド。少年は多くを語らず、二人は同行することに。着いたとき、ソ連兵はデイヴィッドを射殺する。なぜかと問うと、デイヴィッドこそクローが自己増殖、改造された「変種」の「第3号」、つまり機械兵器なのだという。傷痍兵の姿をした「変種第1号」、そして通称「デイヴィッド型」と呼ばれる「変種第3号」を油断して陣地に入れたが最後、壊滅的な打撃を受け、彼ら(3人)だけが生き残ったのだという。

ソ連兵タッソー、クラウス、ルディと同行することになるヘンドリックス。もう一つの変種「第2号」について尋ねる。姿はわからないが前の二つの例から見てどんな姿をしていてもおかしくないという。彼らは月にある地球本部を目指しているのか。一体どんな姿で? 疑念を感じながらも彼らは無人の荒野を行く・・・。

原作は1950年代に書かれたということで米ソの冷戦時代が背景となっています。実はディックの作品でもソ連が「仮想敵」とされている作品は多いのです。まぁそれは一つの前提として、ここでも彼の生涯のテーマである「人間と非人間の境目」というテーマが執拗につづられていきます。この小説では冗長なギャグ的な部分(ディックのファンともなるとこのあたりを偏愛するものだが)は最小限に抑えられ、迫力のある短篇小説となっています。
初期の名作です。




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「スクリーマーズ」(1996年、アメリカ/カナダ/日本)


監督: クリスチャン・デュゲイ
出演: ピーター・ウェラー、ロイ・デュプイ、ジェニファー・ルービン、他。 


西暦2064年、惑星シリウスB6に派遣されたジョー・ヘンリクソン(ピーター・ウェラー)ら鉱石採掘隊の面々。この惑星では「スクリーマー」(変種タイプ1)と呼ばれる機械生命体との戦いが続いていた。地中に棲み、人間を襲ってくるこの機械は虫に似た形をしているが、どこからやってくるのか、また正体など一切不明。
休戦協定が結ばれ、つかの間の平和に酔いしれる面々。だが廃墟で出会った謎の少年デイヴィッドと出合った頃から、隊員たちは一人、また一人と殺され始める。デイヴィッドは人間ではなくかわいい外見で油断させて容赦なく人を殺戮する殺人機械「変種タイプ2」だったのだ。

原作では地球上であった設定は惑星シリウスでの鉱石採掘という形に改められ、また今では時代遅れの「米ソ」という概念も使っていない。ただそのために何のために戦っているのかがわかりづらい。また原作の後半ではヘンドリックス(映画ではヘンリクソン)はソ連兵と同行するが、ここは隊員たちとに改められ、また女性隊員とヘンリクソンとのロマンス要素も加えられている。「変種第2号」は誰だかわからないわけで、こうすることで「愛するものが『変種』かもしれない恐怖」を狙っているのだろう。またアクションはそれなりに見せるがセット、衣装その他が低予算のためかお粗末で、特に原作では大迫力の「デイヴィッドの集団(全く同じ姿の子供が隊員たちを襲ってくる)」の場面がデイヴイッド一つ一つのCG処理が粗雑で冷めてしまう。B級SF作品と言ってしまって構わないと思うが、「トータル・リコール」「マイノリティ・リポート」など超大作がエンターテイメント性を追求してディックの原作からはかけ離れた姿になってしまっている(それはそれで面白いのだが)ことを考えると原作ファン向けの内容と言えるかもしれない。
脚色は「トータル・リコール」も手がけたダン・オバノン。


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