ホームへ戻ります シネマトップへ updated(first) 03/04/2003 last updated


特集: 生涯五指には入るこの映画!

Intoroduction

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(21) 街 さんのレビュー
『スターリングラード』 (2000/アメリカ/ドイツ/イギリス/アイルランド
監督  : ジャン・ジャック・アノー
出演  : ジュードロウ・ジョセフファインズ・レイチェルワイズ・エドハリス他


第二次大戦での大きな転機である「ノルマンディ上陸作戦」を舞台にしたのが「プラ
イベートライアン」である(厳密に言うと内容はちょっと違うのだが)のに対し、
その少し前にドイツ軍の快進撃をかろうじて止めたソ連軍の戦いを描いたのがこの
「スターリングラード」だ。
ソ連が結果的にドイツに勝利するスターリングラードでの攻防だが、決して歓喜に満
ちる映画とはなっていない。どこか『せつなさ漂う映画』だ。映画の中ではソ連が大
反撃に転じる前までの物語。それ以上を追いかけない事で映画自体の内容を濃くする
とともに、暗に「反戦」であるスタンスをとっているといえるからかもしれない。
誰が勝ったのか負けたのか、誰が善人で誰が悪人なのか・・それを問い詰めず、
ひたすら『戦争とは不条理なもの』というメッセを言外に含みながら描かれている。

忌み嫌うドイツを敵に、勝つ側であるソ連のしかも伝説的英雄であるジュードロウ演
じる狙撃主の視点で描いているのに、決してソ連万歳・連合国万歳になっていないの
はそういうところにもらわれていてこれは監督と俳優の力量。レイチェルワイズとの
恋などもあるにはあるが、決してベタベタイチャイチャという軽いものではない。
いきなりオープニングでの光景が凄まじい。このシーンは、大体に於いて「プライ
ベートライアン」を引き合いに出すが、この映画の方が迫力はある。先に兵士の目線
(貨車の扉が開いた時に立ち尽くす)を映し、そこから戦場を俯瞰した映像を見せる。
これおっかないですよ〜。今からあそこにいくのかと思うと。だってそこはまさに地
獄絵図そのものだもの。
岸にたどり着くまでのボートでも銃弾にさらされ、逃げた兵士は味方の上官に撃たれ
るわ、岸に着いても銃弾も銃もひとりひとりの分まで無いし。作戦も何も無い玉砕戦
法。イケイケ。そこに放りこまれる兵士達。誰だって行きたくない最前線地。でも前
に進まなければならない・・そう、立ち尽くしている余裕もないのだ。前進あるの
み。上司は後方に待機し、兵士に突っ込ませる。圧倒的な武力の差を感じ後退するの
だが、後退した兵士は後方にいる上官が撃ち殺す。挟み撃ち。これを「不条理」と
言わずして何を不条理と言うか。この不条理さは映画全体に波及しており、「プライ
ベートライアン」などとはちょっと重みが違うぞ。でも、こういうソ連の上司って、
現代の日本の会社にもいそうだ。手柄は自分のもの、失態は部下に押し付けるって上司。

エドハリスも貫禄ある演技で引っ張る引っ張る。決して取り乱さない。余裕。不思議
なのだが、エドハリスって悪役を演じていても何故か「頑張れ」って思ってしまうの
だ。負けるなって。それとジョセフファインズ。こういう人も会社にいそうです
ねぇ。どうにもイヤな奴って感じで。でも、これも国を思えばこそ。当時のソ連の内
情を知らぬワタクシには、今の価値観であれやこれやとは言えないのだ。
映画全体に緊迫感と間(ま)が存在しており、ドタバタのドキドキハラハラではなくて
その間(ま)によるドキドキハラハラだ。息詰まるって感じ。ソ連側のジュードロウと
ドイツ側のエドハリス。これがバンバン撃ち合ってたら軽い映画だったのかもしれな
いが、空振りに終わったりお互いの駆け引きがあったりで無性に息が詰まる。そう、
息苦しくなるような。
超駄作「パールハーバー」とは対極にある映画。「このヤロウ!もう一回やって
やっか?!」と高揚させる「パールハーバー」に対して(ワタクシだけかな)、
「スターリングラード」は「戦争ってやりたくないな・・」と自然に思わせること間違いな
しである。



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