清姫おりょう―御宿かわせみ〈22〉
清姫おりょう―御宿かわせみ〈22〉 平岩 弓枝

文藝春秋 1999-11
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star22弾

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第22巻。8編を収録。

「穴八幡の虫封じ」

出先で偶然深川の長助と会った東吾は大久保にあるという穴八幡(高田八幡宮)についていく。こちらの「虫封じ」のお守りが子供の癇(かん)をおさえるのにいいという。畝源三郎、お千絵の夫婦に2人目(女の子)が生まれたのだ。
そこで深川の芸者駒吉と知り合う。彼女は生まれの親と育ての親、2人を養って「孝行娘」としてお上から褒美を受けたほどだという。

ところが当の2人はそれに感謝するわけでもなくいさかいを続け、とうとう寒空の中川にともに落ちてしまった。すぐに助けられたが、木更津(千葉)にあずけた駒吉の子供をひきとる、ひきとらないの口論の末だという。

またまわりの人の子供が成長してくるにつれ、東吾の中にあるわだかまりが。
るいに子供ができないことをかわいそうに思う気持ちと、自分の血をひくはずの麻太郎という子供のこと、それがひっかかっているのだった。

「春の雪」

講武所の野外演習が近くあるからと飛鳥山近辺を下見する東吾。ちょうど畝源三郎と深川の長助が王子権現に天しょう院(14代家茂の養母)付の御年寄の代参詣があるのでその下見で来ており、3人は近くをぶらつく。一本杉の神明宮近くで若侍が素焼きの「かわらけ」を投げているのに出くわす。男は駒込の旗本加納政之助というもので5年前にかわらけの代わりに石つぶてを投げて、ある娘に大怪我をさせてしまったのだという。娘はその事故が原因で目が見えなくなり、将来を悲観して自害。ただ政之助は大奥の本寿院(13代家定の生母)と縁があり、そちらのとりなしでおとがめなしということになったのだという。

王子権現の代参詣の当日、一行を乗せた籠の列に石つぶてが飛んできて、パニックになる。混乱がおさまり、近辺を捜索すると田畑の中の林から政之助が切腹した状態で亡くなっているのが発見された。

おもてむきの裁きは政之助が石つぶてを投げ、失敗し、自害というかたちでつけられたが、東吾らは「夢のはなし」としてある娘に「もう1つの謎とき」を聞かせる。

当初の政之助の傲慢さからこの裁きとなることにそんなには抵抗は感じないけど
罪は罪として人はそれを背負っていかなくてはならない。
なかなか凝った、味のある話。

「清姫おりょう」

講武所の帰り、雷雨と夕立にあい東吾は昌平橋の近くの軒先で雨宿りする。そこで「いやだ。あんたなの」と女の声が聞こえ、東吾は人の恋路を邪魔してはいけないと退散する。ちょうど深川の長助と行きあい、神田旅籠町で盗みがあったのでそちらに出向く。

留守中、雷嫌いのるいのためにお吉は神田連雀町の清姫稲荷のおりょうという祈祷師から受けたという雷よけのお札を用意していたのだと胸をはる。
そこへ東吾と長助がいたあの屋敷で夕立の中女性が殺されていたとのことで畝源三郎から知らせがくる。被害者は神田須田町の材木問屋の女主人であり、東吾のいた時間にはまだ生きていたのではということから捜査はなかなか難航する。

この回では珍しく東吾たちが真犯人をとりにがす。
犯人が「いつもの生活」にひそやかに戻っていくラストはけっこうゾクっとくる。

(読了日 2008/4/10)







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