この世の外へ クラブ進駐軍 (2003年 / 日本)

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監督・脚本 : 阪本順治
出演 : 萩原聖人
オダギリジョー
MITCH
松岡俊介
村上淳
シェー・ウィガム
ピーター・ムラン

敗戦後の日本に一気にやってきたアメリカ文化。その象徴が進駐軍であり、その周囲に群がった人たちだった。闇市、パンパン、そしてジャズバンド。敗戦の痛手から立ち直ろうとする人たちの悲しくも力強い青春絵図がそこにはあった。そこに流れていたのはジャズだった。

阪本順治監督(どついたるねん(1989) 、ビリケン(1996) 、新・仁義なき戦い(2000) など)が9.11テロに触発された今作品は、音楽を通した人間愛、「這い上がろう」じゃなく「一緒にがんばろう」と思えるナチュラルな関係を描いている。取材はきっちりしたそうだけれど、そこにこめたテーマは「当時の日本」ではなく極めて現代的なものだ。

太平洋戦争から2年。各地の復興も進む中、遅れて復員してきた楽器屋の息子広岡(萩原聖人)は、軍楽隊時代の先輩・ジョー(松岡俊介)と再会する。彼らは米軍基地内のクラブでジャズ演奏をするようになる。
5人組のジャズバンド”ラッキーストライカーズ”の誕生だった。

この5人の個性がそれぞれいい。演奏にも力が入っている。
萩原聖人は歌も歌い、テナーサックスに賭ける男っぽいリーダー。
松岡俊介は優男ながら締めるところは締めているいい男でベーシスト。
実の兄が左翼運動に傾倒し、「米軍に魂を売った」彼との口論は絶えない。
オダギリジョーはバンドに転がり込んだもののドラムもまったくできないトーシロ。「スティック」を「バチ」と呼ぶ彼にメンバーの特訓は続く。
村上淳は気が優しすぎて歌手の彼女も守ることのできないドジなピアニスト。
元Black Bottom Blass BandのトランペッターMITCHは凄腕だが麻薬に溺れた男を演じる。

相手役となる米軍にもいい味のキャラが何人かいて。
クラブで5人の世話役をするジム(ピーター・ムラン)は一人息子ダニーを亡くしていて「ダニー・ボーイ」を演奏されると涙が止まらなくなる。
もう一人、ラッセル(シェー・ウィガム)は弟を日本軍に殺され、日本人への憎悪を捨てることができない。ラッキーストライカーズの演奏に乱入して萩原聖人を食う勢いで熱演した彼は真性のサックス奏者だった。
後に広岡と無二の親友となる彼が残したオリジナル曲が「Out Of This World この世の外へ」だ。

音楽を通して彼らがつながっていく過程を描いているが、実に様々なことが起きる。日本人の暮らしも大変なんだけれど、朝鮮戦争の勃発で派兵されることになった米兵はまた激しい動揺に見舞われる。興奮した彼らを鎮めるのにアメリカ国歌(皆一斉に敬礼する)を使ったり、名曲「ダニー・ボーイ」を流すことのできない事情、さらに通訳を買って出たハワイの日系2世が日本人を「ジャップ」と呼ばざるを得ない悲しい事情など。

まったくの脇役もいい味を出している。
哀川翔演ずるインチキ英語を繰り出すGHQご用達の闇市商人、ジャズメンに軍歌を毎回歌わせる徳井優、萩原聖人の父親を演じる大杉漣など、渋かった~。

全編に流れるのはジャズの名曲だけれど、それとともに当時の日本の流行歌なども流れます。
それとベテランのジャズ・ファンの方はエンド・ロールにもご注目ですね。

若さと懐かしさがうまく融合した、いい作品でした。







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