Black Pepper’s Blog

台湾の侯孝賢（ホウ・シャオシェン）監督が日本を舞台に撮った（スタッフも日台共同）「珈琲時光（コーヒーじこう）」という映画を観てきました。
一青窈の映画初主演作品（主題歌「一思案」も彼女の作品）ということでも密かに話題です。
渋谷ユーロスペースにて。

珈琲時光 (2003年　/　日本・台湾）

写真クリックで公式サイトへ

監督:侯孝賢
出演:
一青窈
浅野忠信
萩原聖人
余貴美子
小林稔侍

(あらすじ　goo映画　）
フリーライターの陽子は、生みの母が台湾人で、日本と台湾を行き来している。高崎で暮らす実の父と義理の母とはいい関係だ。古書店の二代目、肇（はじめ）とは親しく付き合っており、台湾の音楽家、江文也の資料も探してくれた。肇は陽子に思いを寄せているが、その気持ちを伝えられない。ある日陽子は、自分が妊娠していることを高崎の両親に告げる。相手は台湾の男性で、陽子はひとりで産むつもりだ。日々は穏やかに過ぎ、陽子は、自分を思う人々の優しさに包まれていた。

侯孝賢監督が敬愛する小津安二郎の生誕100周年を記念して、
20年来の交流のある「東京」を舞台に描いた
「21世紀の『東京物語』」というのがキャッチコピー。

すごく静かな作品だ。
ストーリーはここに書いてある以上のものではないんだけど、陽子という女性の暮らしぶり、喜び、悲しみがさりげなく描かれていて、
「日常」というものの美しさ、大切さを思い出させてくれる。

そして彼女は東京をよく「歩く」。
その見る景色は台湾の監督が撮ったとは思えないほど
「ネイティブ東京」な裏町、人の暮らしの息遣いが感じられる
「かつての古きよき東京」を思わせる。

陽子が住んでいるのは豊島区、雑司が谷。ここから都電に乗って大塚駅に出、山手線や中央線で都会に出るのが日課。
有楽町、御茶ノ水、神田神保町、高円寺、秋葉原。
江文也の足跡を探して神保町の肇（はじめ）の古書店を初め、
数々の古書店、喫茶店を訪ねる。
そこで会う人々もどこか優しく、時代のスピードとは関係ない
時間を生きているかのようだ。
さらに高崎で彼女を待つ両親（小林稔侍、余貴美子）も
「結婚はしないで子供はちゃんと育てるわ」という彼女に
とまどいつつも、強い言葉ではなく、包み込むような態度で
彼女をあたたかく見守っている。
こういうのって今ではなかなかない「奇跡」のような瞬間だ。

「ストーリーが淡白すぎ」とか「動きがない」
という批判も当然あるだろう。
だが東京の街をこんな風に撮ってくれたんだということで
僕なんかは単純にうれしいのも事実。
東京に住んでいる方に密かにオススメしたい作品。

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