雨月―御宿かわせみ〈17〉
雨月―御宿かわせみ〈17〉 平岩 弓枝

文藝春秋 2005-12
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第17巻。8編を収録。

「雨月」

かわせみに遊びに来た麻生宗太郎の誘いで東吾はるいや七重、幼子の花世、長助もつれて菊見物に出かける。本所の五間にある神保三千次郎という旗本の屋敷で菊見物の際にその近くの長慶寺の木犀(もくせい)の見事さに魅かれる。
そこで20年ほど前に両国であった大火で生き別れた兄を探しているという伊之助という男と知り合う。

ネタばれをしてしまうとこの兄弟のどちらかが商家に入る盗人だったのだが、
両方の話を聞いた上で、表面に見えてこない「あやしき点」を押さえて
真犯人を検挙するのが東吾のうまさであり、食えなさだと思う。

こういう人は、だませない。

「梅の咲く日」

深川の長助には孫が2人いる。そのうち下の長吉の書初めが亀戸の天満宮の絵馬堂に展示されるというのでるいとお吉は見に行く。そこで旧知のさくら屋の金兵衛に声をかけられるが、その際かわせみの泊り客孫八の姿を眼にする。

翌日孫八が東吾やるいらに相談に来るが31年前に捨てた子供を捜しているのだという・・・。

見つかった倅がそれと知らず父に別れを告げるシーンが秀逸。
それだけでは済まないのが捕り物帳たる由縁なのだが・・・。

「春の鬼」

川口(埼玉)の善光寺参りに知り合いの者ら8人で出かけた志保井親子ら。
湯島、根津から駒込の吉祥寺、飛鳥山、王子権現まで来たところで志保井の親父が
酒のせいもあってバテてしまい、ここで抜けるという。
行きがかり上志保井の娘お妙を高橋新左衛門が送っていくことになった。
ところがその2人が途中庚申堂で心中してしまったのだという。

心中ということに合点がいかない東吾が奥向きの調査をするうちに
「もう1つの動機」が浮かび上がる。

どちらにしても男と女のことは一筋縄ではいかない様子。

「百千鳥の琴」

るいの旧知、和光尼(元の名は和世)がかわせみを訪ねてくる。
おみわという者に稽古用の琴が入用なのだが、譲ってもらえないかという相談だ。
るいは自分はもう弾かないからとこころよく琴を譲るが、数日後おみわの夫森助が駒込吉祥寺で亡くなる。

急にお金が入って隠さなくてはならなくなった場合、どう隠しますかという話。
こういう風にしゃれた贈り物に変えて残すのも悪くはないと思う。

のちにるいは「身の丈にあった」手ごろな琴を買い、また贈る。

(読了日 2007/3/25)







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