「コールド・マウンテン」を観てきました。
今年のアカデミー賞では「本命かなぁ」とも思っていたのですが、
フタを開けてみればレニー・ゼルウィガーの助演女優賞のみだったという本作。
でもこれはいいですよ~。
アンソニー・ミンゲラというと「イングリッシュ・ペイシェント」もそうでしたが、これも歴史を感じさせる文芸作品。
しかも泣ける! ストーリー、音楽、ともにハイレベルです。

cold_muntain.jpg

画像クリックで公式サイトへ

監督・脚本:アンソニー・ミンゲラ
出演:
ジュード・ロウ
ニコール・キッドマン
レニー・ゼルウィガー
ドナルド・サザーランド
フィリップ・シーモア・ホフマン
ナタリー・ポートマン

(あらすじ goo映画
南北戦争末期、南軍兵士として戦場に送られたインマンは、重傷を負って病院に収容される。彼の脳裏に浮かぶのは、故郷コールドマウンテンと、恋人エイダの面影。彼女への愛が、彼に残されたたったひとつの確かなものだった。インマンは、死罪を覚悟で脱走兵となり、故郷へと向う。一方、父を亡くした牧場の令嬢エイダは、インマンとの再会だけを心の支えに、厳しい自然に耐え懸命に生きていた。そこに流れ者のルビーが現れ、エイダに逞しく生きる術を教える。牧場再建に尽力する中、戦争は終わりに近付き…。

エイダ(ニコール・キッドマン)とインマン(ジュード・ロウ)の恋はまさにプラトニック・ラブ。大農場主のお嬢様だったエイダと一介の農夫のインマンの間には超えがたい身分の差があり、彼らの唯一の絆はインマンの出征直前にかわしたくちづけだけ。それが次々と戦友の倒れる戦場で彼を支えつづけ、生き延びさせたのだ。
つくづく彼女の言った「私は待ってます」という言葉の影響力の強さを思ってみたりもする。

それとこの映画の舞台が南部だということもポイント。

戦争が始まろうとする時コールド・マウンテンの男たちは、リンカーンや北軍(Yankeeと蔑称で呼ばれる)に対する憎悪がむき出しになるけれど、このあたりは南部だったらごく自然なことだったのかもしれない。
若い男たちがいなくなったあとのコールド・マウンテンは「義勇軍」と称する自警団に支配され、残った女や老人達は彼らの好きなようにされてしまうが、エイダは父が亡くなるという逆境に耐え、その中を生きようとする。
そこに現れたのがルビー(レニー・ゼルウィガー)。
彼女の英語がほとんど「べらんめえ口調」(と言ってしまおう)の南部なまりで、学もなく、野性的なキャラクターであるということをこれでもかと表現している。レニーって「ブリジット・ジョーンズの日記」でもイギリス英語をマスターしていたけど、すごく「言葉」に対する意識の高い人だな。
彼女が「フランス語や文学は知ってるけれど生活に必要なことはなにひとつ知らなかった」(だから父が亡くなった後は屋敷や牧場も荒れ放題だった)エイダに「生きる知恵」「エネルギー」を注ぎ込む。
後半はこの女二人の友情も見ものだろう。
エイダはまったくの別人のような「たくましい女」になっていくのだ。

インマンの戦場や脱走兵となってからの生活は陰惨そのものだ。
後に「僕は変わってしまった」と語っているが
まさにその通りの血で血を洗う展開。
仲間の死体を引きずり、泥にまみれて隠れ続け、南軍からも北軍からも逃げ続ける。
ナタリー・ポートマン演じる乳飲み子をかかえた未亡人との一瞬の逢瀬もあるが、それも追っ手にかき消されてしまう。

後半にルビーのろくでなしの父親(ブレンダン・グリーソンが好演)が登場し、ルビーと彼との「冗談じゃないわよ、クズ」といいたげな(でも心の底ではしっかりつながっている)親子関係が彩りをそえる。彼の演奏するフィドルの曲がとても魅力的。
彼らの一瞬の「幸せ」にも戦争の影は覆いかぶさってくる。

この作品は南部(ノース・カロライナやサウス・カロライナ)のほかルーマニアでも撮影されている。
アメリカのこころのふるさとを海外で撮影したということで批判も浴びたとのことだが、この美しい自然があってこその映画の説得力だと思う。まぁ日本人には直接関係ない話だし。
音楽もコーエン兄弟の「オー・ブラザー」のようなアメリカ南部のルーツ・ミュージックを強烈に意識させる哀愁と濃厚な芳香を放っていて素晴らしい(サントラはこちら)。
ニコール・キッドマンやジュード・ロウの完璧な衣装へのハマり具合も含めて、Aクラスの文芸大作の条件は備えている。

2時間半退屈しませんでした。◎作品。







関連記事(試験運用中)

  • No related posts




  • コメント/トラックバック:1 個 »

    トラックバックURL: http://blackpepper.oops.jp/wp/archives/849/trackback

    トラックバック & ピンバック

    1. ★★★★★「コールドマウンテン」ニコール・キッドマン、ジュー…

      南北戦争で、みな理性を失ったような狂気のさなか牧師ですら殺人を犯そうとします。そんな中、魂を汚さず生きてゆけるのは心に宿る誰かへの愛・・?ニコール・キッドマンは…

      トラックバック by こぶたのベイブウ映画日記 — 2004/12/30 木曜日 @ 22:23


    コメント

    コメントをどうぞ

    コメント、トラックバックは確認後に表示されます。しばらくお待ちくださいね。

    段落や改行は自動挿入です。メールアドレスはサイト上では非表示です。
    使用できる HTML タグ: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <code> <em> <i> <strike> <strong>